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企業支援エトセトラ

令和4年11月15日

46.令和4年度のお勧め助成金②

以前、令和4年度のお勧めの助成金をいくつかご紹介しました。今回は、最近拡充されて利用しやすくなった助成金を2点ご紹介します。

厚生労働省は、令和4年10月28日に、「賃上げ・人材活性化・労働市場強化」雇用・労働総合政策パッケージを策定しています。その中で「人材の育成・活性化を通じた賃上げ促進」「賃金上昇を伴う円滑な労働移動の支援」「雇用セーフティネットの再整備」の一体的、継続的な取組の推進が標榜されており、今回の拡充はその施策の一環をなすものと考えられます。

 

業務改善助成金

業務改善助成金は、中小企業、小規模事業者等に対して、生産性向上のための設備投資等(機械設備、コンサルティング導入や人材育成・教育訓練)を行い、事業場内で最も低い賃金(事業場内最低賃金)を一定額以上引き上げた場合に、その設備投資等にかかった費用の一部を助成する制度です。

通常コースのほかに、新型コロナウイルス感染症の影響により売上高等が30%以上減少している中小企業事業者等に対しては、特例コースが設けられているところ、その特例コースについて、令和4年9月1日から、対象期間と申請期限が延長され、原材料費の高騰などで利益率が5%以上減少した事業者にも適用がされるなどの拡充が行われました。

 

[拡充の内容]

申請期限 令和5年1月31日まで
賃上げ対象期間 令和3年7月16日から令和4年12月31日まで
対象事業者 原材料費の高騰など社会的・経済的環境変化等外的要因により利益率(※)が前年同月に比べ5%以上低下した事業者を追加
売上高等の比較対象期間 令和3年4月から令和4年12月までとし、任意の3カ月の平均値と3年前までの同期との比較で30%以上減少している事業者
助成率 事業場内最低賃金額が920円未満の事業者は4/5に引上げ(従前は一律3/4)

※利益率とは、売上高総利益率または売上高営業利益率(令和3年4月から令和4年12月のうち、任意の1か月の総利益または営業利益の金額を売上高で除した率)

 

対象事業者について、令和3年7月16日から令和4年12月31日までの間に、事業場内最低賃金を30円以上引き上げることが要件となっています(なお、事業場内の最低賃金と地域別最低賃金の差額が30円以内であることも必要)。そして、現状、賃金引き上げ額が30円に満たない場合でも、申請時までに遡って追加の引上げを行い、当該差額が支払われた場合は、当該要件に該当するものと取り扱われます。

 

[助成率及び助成額]

助成率 事業場内賃金が920円未満の場合 4/5
       920円以上の場合 3/4
 

[助成額の上限]

最低賃金額引き上げの労働者数 上限額
1人 30万円
2~3人 50万円
4~6人 70万円
7人以上 100万円

助成の対象は、生産向上等に資する設備投資等として、例えば、PCやスマホ、タブレットや自動車(従前は乗車定員11人以上のところ、拡充により乗車定員7人以上又は車両本体価格200万円以下の自動車も対象)等の機械設備の新規購入費用、コンサルティング導入費用、人材育成・教育訓練にかかる費用などです。また、業務改善計画に計上された関連経費(広告宣伝費、汎用事務機器の購入、机・椅子の増設など)も対象になる点が通常コースとの大きな違いです。

 

詳細はこちらをご覧ください。

 

産業雇用安定助成金

新型コロナウイルス感染症の影響で事業活動の一時的な縮小を余儀なくされた事業主が、在籍型出向により労働者の雇用を維持する場合に、出向元・出向先の双方の事業主に対して助成される制度です。

対象となる出向は、雇用調整を目的とするもので、出向した労働者が出向期間終了後にもとの事業所に戻って働くことが前提です。企業グループ内の出向も通常の配置転換と区別して行われるなど一定の要件を満たす場合は対象になります。

また、出向元事業主について、最近1か月の売上高または生産量などの事業活動を示す指標(生産指標)が、前年、前々年または3年前の同月と比較して5%以上減少していることなどの要件が必要です(その他に出向先事業主について解雇等を行っていないことなどの要件が必要)。

こちらの助成金は、令和4年10月1日からその内容が拡充されています。

 

[助成と拡充の内容]

助成の内容について、拡充前は、①出向初期経費助成と、②出向運営経費助成だけでしたが、拡充により、③出向復帰後訓練助成が追加されました。

また、拡充前は、出向元・出向先ともに1年度あたり最大500人までとされていましたが、出向元事業主に限り上限が撤廃されました(資本的・経済的・組織的関連性など、独立性が認められない事業主間で実施される出向はこれまでどおり最大500人まで)。

 

①出向初期経費助成

出向前に出向の成立に必要な措置を行った際の費用(例えば、就業規則や出向契約書の整備費用、出向に際してあらかじめ行う教育訓練費用、出向者を受け入れるための機器や備品の整備等の費用)が、出向元及び出向先事業主それぞれに支給される(但し、企業グループ内出向の場合は支給されない)

助成額 出向元、出向先各10万円/1人あたり(定額)
加算額 各5万円/1人あたり(定額)
 

②出向運営経費助成

出向中に必要な経費(例えば、賃金、教育訓練・労務管理に関する調整経費など)の一部が、出向元及び出向先事業主それぞれに最長2年(拡充前は最長1年)まで助成されます。なお、2年に延長される期間は令和6年3月31日までで、事前に延長届の提出が必要です。

助成率 中小企業 中小企業以外
出向元が労働者の解雇などを行っていない場合 9/10 3/4
出向元が労働者の解雇などを行っている場合 4/5 2/3
企業グループ内出向の場合 2/3 1/2
上限額(出向元・出向先の合計) 12,000円/1人1日あたり
 

③出向復帰後訓練助成

出向から復帰した労働者に対して、出向で新たに得たスキル・経験をブラッシュアップさせる訓練(off-JT)を行った際に、訓練に要する経費と訓練期間中の賃金の一部が、出向元事業主に対して助成されます。

なお、出向から復帰後3か月以内の訓練開始や、訓練期間は6カ月以内などの要件があります。また、訓練開始日前日までに「復帰後訓練計画」の提出が必要です。

経費助成 実費(上限30万円)
賃金助成 1人1時間あたり900円(上限600時間)

詳細はこちらをご覧ください。

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