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社会保険労務

平成24年10月1日

3.労働保険って何?(労働保険の基礎知識)

労働保険とは、労災保険(正式名は「労働者災害補償保険」といいます。)と雇用保険を総称した言葉です。

どういう制度なの?

労災保険とは、労働者が「業務上の事由」又は「通勤」によって怪我をしたり、病気になったり、あるいは死亡した場合に、被災労働者や遺族を保護するために必要な保険給付を行う制度です。

雇用保険とは、労働者が「失業した場合」などに、労働者の生活及び雇用の安定を図るとともに、再就職を促進するために必要な給付を行う制度です。

加入する必要があるのはどんな場合?

労災保険は、農林水産などの一部の事業を除き、労働者を1人でも雇っていれば労働保険の適用事業となります。そして、正社員のみならずパートやアルバイトも全て対象となります。

一方、雇用保険も事業所の規模にかかわらず、(1)1週間の所定労働時間が20時間以上で、(2)31日以上雇用される見込みがある人を雇い入れた場合は適用対象となります。

ですので、多くの事業所で労働保険の加入が必要となることでしょう。

どういう手続をとる必要があるの?

事業主は「成立手続」と「労働保険料の納付手続」を行う必要があります。

労災保険と雇用保険については、農林水産業や建設業等を除き、原則として保険料の申告や納付等を両保険一体のものとして扱われます(その場合の事業を「一元適用事業」といいます)。

成立手続

「保険関係成立届」を所轄の労働基準監督署又は公共職業安定所に提出するとともに、「概算保険料申告書」を提出し、その年度分の労働保険料を概算保険料として申告納付する必要があるのですが、一元適用事業の場合、その手続は両保険一本で同時に行うことができます。

また、雇用保険の場合、上記の他、「雇用保険適用事業所設置届」及び「雇用保険被保険者資格取得届」を所轄の公共職業安定所に提出する必要があります。下記のとおり、その期限と提出先は異なります。

提出書類 期限 提出先
保険関係成立届 保険関係成立の日から10日以内 所轄の労働基準監督署
概算保険料申告書 保険関係成立の日から50日以内 所轄の労働基準監督署、所轄の都道府県労働局、日本銀行等、のいずれか
雇用保険適用事業所設置届 設置の日から10日以内 所轄の公共職業安定所
雇用保険被保険者資格取得届 資格取得の事実があった日の翌月10日まで 所轄の公共職業安定所

なお、成立手続を怠った場合は、行政庁の職権による成立手続及び労働保険料の認可決定が行われ、遡って労働保険料を徴収されるほか、追徴金の徴収も受けることになります。

また、保険関係成立届を提出していない期間中に労働災害が発生し、労災保険給付が行われた場合には、遡って労働保険料と追徴金だけでなく、労災保険給付に要した費用の全部又は一部まで徴収されることになります。

労働保険料の納付手続

(1)まず、労災保険料は、全額事業主負担です。

基本的に従業員に支払った賃金総額に労災保険料率(事業により3/1000~103/1000に分かれている)で計算されます。

(2)雇用保険料は、従業員に支払った賃金総額に雇用保険料率を掛けることで計算し、従業員負担分と事業主負担分で掛ける雇用保険料率が変わってきます。

ざっと以下の表のとおりになります。

業種 雇用保険料率(従業員負担分) 雇用保険料率(事業主負担分)
一般の事業 5/1000 8.5/1000
農林水産業
清酒製造業
6/1000 9.5/1000
建設業 6/1000 10.5/1000

雇用保険料については、上記のとおり事業主の負担する割合が若干多くなっていますが、その分は、雇用の維持や雇用の促進を行う企業に対する助成金の財源にあてられています。

労働者負担分は給与から控除され、事業主がまとめて納付します。

労働保険料は、年度当初に概算で申告・納付し翌年度の当初に確定申告の上精算することになっています。事業主は、前年度の確定保険料と当年度の概算保険料を併せて申告・納付することになります。これを「年度更新」といい、毎年6月1日から7月10日までの間にこの手続を行うことになります。

労働保険の手続は、入退社時や年度更新時だけなく、突然、業務災害や通勤災害が発生した場合にもそれに即した対応が必要となります。助成金が絡むケースも多く、知らなくて損をすることもあります。

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