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社会保険労務

平成25年7月18日

17.合同労組への対応の仕方

今回は労働組合、特にいわゆる合同労働組合(以下「合同労組」といいます。)との団体交渉に対してどのように対応すれば良いのかについてお話しします。

経営者の皆さん方の中には会社には労働組合がないので関係ないと考えている方もいるかもしれません。しかし、今は企業別の労働組合だけでなく、産業別や業種別、地域別に組織された労働組合が増えており、労使トラブルの中でこのような合同労組の介入が増えてきているのです。

合同労組とは、中小企業では労働組合を作りにくいという事情から生まれた形態で、一定地域ないし業種の労働者が、企業を超えて組織・活動する団体です。

合同労組には、以下のような特徴があります。

所属する職場に関係なく加入できる

所属する職場の中に企業別労働組合があっても加入することができます。

1人でも加入できる

1人で加入できるがゆえに、残業代請求や解雇案件など、個別の労使紛争に介入してくることになります。

退社後でも加入できる

最近は在籍したまま残業代等を請求するケースも増えています。

雇用形態に関係なく加入できる

従来、パートやアルバイト、契約社員といった非正規雇用社員は職場に組合があっても加入できないことが多かったのですが、そういった正社員に比べて立場が弱い人達も加入できます。

 

そして、通常の企業内労働組合であれば、企業への帰属意識ゆえに強い要求を控えがちであったり、会社が経営危機に陥りそうな時にはある程度会社に同調することもありますが、合同労組は企業の外で作られる組織ですので、会社に対する遠慮がなく、場合によっては強硬姿勢を崩さないという特徴があります。

労働者が合同労組に加入し会社に対して交渉を求める場合、まず加入通知とともに(と兼ねて)団体交渉申入書が送られてくるのが通常です。

このときに慌ててはいけません。最初の対応が肝心です。

(1)まず、団体交渉の申し入れを安易に拒否したり無視してはいけません労働組合法第7条2項)。労働者が1人しか加入していないとしても、また、会社に企業内労働組合があろうがなかろうが、合同労組が適法な労働組合である以上、団体交渉には応じなければなりません。

この点、直接会わずに、文書のやりとりや電話だけで交渉を終わらせたいと思っても、それは、当事者の合意に基づかない限り誠実交渉義務を尽くしたことにはならない、という判例も出ていますので、注意が必要です(合同労組が直接交渉しないことに合意することは通常考えられません)。

(2)当該労働者に対して労働組合に加入したことを理由に解雇するなど不利益な取扱いをすることは許されません。また、当該労働者に組合をやめるよう説得してもいけません。

(3)団体交渉申入書の中では、通常、日時や場所、参加者が指定されています。

① 相手の指定する日時に応じる必要はありません。都合の悪い日時であれば変更を求めることもできますし、準備に時間がかかる場合であれば、十分準備できる時間をとりましょう。また、時間も、就業時間中の開催だと団体交渉中の賃金の支払問題が生じるので、必ず就業時間後に指定しましょう。終了時間も指定しておいた方が良いでしょう。

② 場所は公共施設やホテル、貸し会議室などを利用しましょう。相手が会社の施設や労働組合事務所で行うことを指定してきたとしても、他の従業員の悪影響、会社の施設を使うことが当たり前になってしまう危険、漫然と交渉時間が長引く可能性などを考えると避けた方が無難です。

③ 人数についても、相手は労働法のプロですので、あまり多すぎると威圧されてしまいます。せいぜい双方4名程度と制限しておいた方が良いでしょう。会社側は必ずしも経営者が参加する必要はありませんが、権限のない者だけ出席しても効率的な交渉はできませんから、事情をよく分かっている担当者と一緒に出席した方が良い場合もあります。

(4)申入書の中で具体的な議題や要求の内容が記載され、団体交渉当日までにそれに対する回答を求められることもあります。その際、議題や要求の内容が不明確であれば事前に明確にするよう求めることは問題ありません。

次に、実際の団体交渉の場における注意点を述べます。

(1)団体交渉には当該労働者も同席する場合がありますが、熱くならずに何を言われても冷静に対応するよう心掛けましょう。相手は秘かに録音している可能性もあります。発言には注意しましょう(事前に録音の可否について取り決めておくことが望ましいです)。

(2)不誠実な態度で団体交渉をすると、団体交渉拒否とみなされてしまうので注意が必要です。

とはいえ、そのことを必要以上に恐れる必要はありません。労働条件、労使間のルールに関わらない事項について団体交渉に応じる必要はありませんし、受け入れることのできない要求であれば、具体的な資料や論拠を示した上で拒否すること自体は問題ありません。相手と合意しなければならないという義務まではありませんので、主張を認めたり要求に応じなければいけないわけでもないのです。

なお、資料をどこまで提出するべきかについては悩ましいところですが、拒否するには合理的理由が必要ですので、例えば賃金台帳など経理に関する資料を理由なく提出しないと誠実に交渉していないとみなされる可能性もあります。

(3)団体交渉終了後、議事録へのサインを求められることがありますが、その場で応じてはいけません。たとえ議事録という形式でも労働協約として効力をもってしまうことがありますので、必ず持ち帰って検討するようにしましょう。

 

最後に、こうした合同労組との交渉に私達のような専門家が介入するメリットについてお伝えします。

まず、

団体交渉に向けた事前準備に関する相談対応

団体交渉に同席することにより、その場で的確な助言やアドバイス

要求書に対する回答書や最終的な合意書の作成

などを行うことができます。

さらに、

仮に交渉がまとまらず労働審判や訴訟など次のステップに移行した場合でも、そのまま会社の代理人として行動することができます。特に労働審判ではスピーディーな対応が迫られますので、一から事実関係を説明する必要がなく効率的な対応が可能となります。

労使トラブルが生じた原因を分析し、他の従業員への対応も含めて(例えば残業代請求などはその結果が他の従業員にまで波及する場合があります)、新たな改善策を提案することができます。

もし、合同労組から文書が届いた場合は、是非、私達にご相談下さい。

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