平成29年1月14日
前回までは、資格(等級)制度の基本についてお話させていただきました。
今回は、賃金制度について見ていきたいと思います。
賃金制度について
賃金は従業員の労働の対価として支払われるものです。そのため賃金の決定には、仕事の内容やレベル、達成度等に応じた適切な決定が必要となりますが、その決定方法については、公平性、納得性、透明性が担保されるものでなければなりません。賃金額や格差、水準の決定方法を体系としてまとめたものを「賃金体系」といいますが、公平性等を保つことが従業員の労働意欲の持続及び向上に繋がります。
賃金を決定するにあたって、「人」を基準にするか、「仕事」を基準にするか、という問題があります。従前は、勤続年数や学歴等に応じて賃金を決定するといういわゆる年功序列型の賃金体系が主流を示していましたが、現在は、職務能力や成果に重点を置いた、いわゆる能力主義型といえる賃金体系を取り入れる企業が増えています。
前回までにお話しした職能資格(等級)制度においては、職務を遂行する能力のレベルによって賃金を決定(職能給)することが基本ですが、一方で、生活に必要な最低限の生計費の確保といった水準面での確保も必要ですので、年齢給も加味して構成することがベストだといえます。そこで今回は、年齢給と職能給を組み合わせるかたちで賃金体系を構築する方法についてお話しします。
賃金制度の構築方法
(1)賃金制度を構築するにあたっては、上で述べたように、賃金の決め方(基準)が公平か、という点に留意する必要があり、さらに、基準に対応した格差や賃金の水準が適正か、といった観点も考慮する必要があります。
具体的な設計の手順としては、①実態を把握した上で基本給ピッチを決定、②年齢給の設計、③職能給の設計、④賃金水準の検証、を行います。
(2)基本給ピッチの決定
「基本給ピッチ」とは、基本給の1歳あたりの傾斜を意味します。横軸を年齢、縦軸を基本給額とするグラフを考えると、一般的には年齢があがると基本給額も増えるので右上がりの線になりますが、この線の傾斜の角度を基本給ピッチと呼びます。
基本給ピッチは、例えば、40歳の標準的課長の基本給額から18歳高卒初任給を引いた額を年数で割る、といった方法で算出します。 仮に、40歳の標準的課長の基本給額が38万円、18歳初任給を16万円とすると、その差額22万円を年数(22年)で割ると1万円となりますので、この金額を基本給ピッチとします。
年齢給と職能給の組み合わせで賃金体系を設計する場合を前提とすると、基本給ピッチには、「年齢給ピッチ」と「職能給ピッチ」に分類できます。また、職能給ピッチについては、同一等級内でその習熟度合いに応じて賃金が昇給する「習熟昇給ピッチ」と、能力が高まることで1つ上の昇給に昇格することで賃金が昇給する「昇格昇給ピッチ」の2つに分類できます。
(3)年齢給ピッチの決め方
基本給ピッチの中で年齢給ピッチと職能給ピッチをどのように配分するかは会社の実情等に応じてある程度自由に決定できますが、仮に、年齢給ピッチを3割、職能給ピッチを7割とすると、先の例では、1万円×3割=3000円となります。
年齢給は最低生計費水準を保つためという目的のものなので、標準的なライフサイクルを考慮して設定すべきであるといえます。つまり、一定の割合に応じて常に上昇し続けるものではなく、年齢に応じてピッチの配分を変えることが望ましいです。
上記ライフサイクルに応じて、年齢別に年齢給ピッチを配分すると、例えば、標準年齢給ピッチ(X)を3000円とした上で、以下のように計算します。
①18歳~21歳 3000円(X)
②22歳~29歳 3600円(X×1.2)
③30歳~39歳 2500円(※)
④40歳~47歳 1500円(X×0.5)
⑤48歳~54歳 0円
⑥55歳~59歳 -3000円(-X)
※30歳~39歳は、残差計算で調整:(X×22年-①×4年-②×8年)÷10年
次回は職能給の設計方法について説明いたします。