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消費者問題

平成25年4月10日

5.企業のための消費者法 ‐広告規制②‐

広告規制の各論については、まず、全ての企業を対象とする一般的な規制についてご紹介します。

(1)独禁法による規制

私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下、「独禁法」といいます。)は、19条により事業者に「不公正な取引方法」を用いることを禁止し、2条9項6号は、公正な競争を阻害するおそれがあり、公正取引委員会(以下、「公取委」といいます。)が指定する「不公正な取引方法」にあたる行為類型として、ハ「不当な顧客誘引」をあげています)。そして公取委は一般指定の8項で、「自己の供給する商品又は役務の内容又は取引条件その他これらの取引に関する事項について、実際のもの又は競争者にかかるものよりも著しく優良又は有利であると顧客に誤認させることにより、競争者の顧客を自己と取引するように不当に誘引すること」がこれにあたるとしています(http://www.jftc.go.jp/dk/guideline/fukousei.html)。

これがいわゆる「欺瞞的顧客誘引」であり、よく引き合いに出されるのが、フランチャイズの加盟店を募るにあたり、過大な予想売上や予想収益が提示されたような場合です。広告内容がこの欺瞞的顧客誘引にあたると認定された場合は、公取委によって排除措置命令(20条)が出されたり、被害者による差止(24条)や損害賠償(25条)の請求を受けることになります。

(2)景表法による規制

不当景品類及び不当表示防止法(以下、「景表法」といいます。)は、4条1項により「商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの」(1号)、「商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの」(2号)を禁止しています。1号が「優良誤認表示」、2号が「有利誤認表示」と呼ばれるものです。

これらは独禁法の「欺瞞的顧客誘引」とよく似た体裁ですが、景表法による規制対象は「誘引」ではなく「表示」であり、保護対象は「顧客」ではなく「一般消費者」に限定され、両法による規制の関係は、一般法と特別法の関係にあると言われ、実際の適用場面は、大雑把に言って、独禁法では「事業者間取引」、景表法では「一般消費者向けの取引」に棲み分けがされていると言われています。この違いは、独禁法が事業者間の競争法であり(主務官庁は公取委)、景表法が消費者保護を主目的とする消費者法である(主務官庁は消費者庁)ことによるとされますが、前者も消費者法的性格を有しますし、後者も競争法的性格を有します(余談ですが、オーストラリアでは、「消費者・公正取引委員会」として競争法と消費者法は同じ所管の行政機関が担当しています)。

上記の優良誤認表示、有利誤認表示のほかにも、「商品又は役務の取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれのある表示であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認めて内閣総理大臣が指定するもの」(3号)として、商品の原産国、無果汁清涼飲用水等、おとり広告などについての表示規制がなされています。

そして優良誤認表示については、内閣総理大臣が事業者に対して、その優良性が真実であることを根拠づける具体的資料の提出を求めることが出来るものとし、提出されないときはその表示が優良誤認表示にあたるものと見なす規定(4条2項)も置かれています。

これらの景表法違反の不当表示については、措置命令という行政処分によって、差止や再発防止措置、その実施に関連する公示などが命じられることがあり(6条)、その処分をなす前提として立入検査等がなされることがあります。また適格消費者団体による差止請求を受ける場合もあります(10条)。

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