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消費者問題

平成27年12月1日

17.企業のための消費者法 ―DNC/DNK 大阪府議会が意見書採択―

反対の声を挙げる業界と、導入賛成でもサイレントマジョリティの消費者

これまで数度に亘り電話勧誘拒否登録(Do-Not-Call)制度(DNC)と、訪問販売お断りステッカーなどによる訪問勧誘拒否(Do-Not-Knock)制度(DNK)について述べてきました。この両制度、特にDNKについて、新聞業界を初めとする訪問販売業界から強い反対意見が出ていることは既に述べたとおりです。内閣府消費者委員会では先の特定商取引法改正専門調査会が出した中間整理に際して、意見募集を行いましたが、規制反対が4万件弱、規制賛成が500件という大差がつき、数の上では反対論(事業者側)圧勝という結果になりました。消費者庁が昨年行った訪問販売に関する意識調査では、有効回答数のうち、訪問勧誘を受けたくないという意見が96%以上を占めていたものであり、そのことからすれば、事業者側がそれこそ業界挙げて反対運動を展開し、数の上で押し切った感があります。上記の意見募集は一般消費者に十分周知がなされておらず、また郵送という方法がとられたことから、このような結果となったと思われますが、この問題は、サイレントマジョリティである消費者の導入希望論をどうするのか、増加する高齢者の被害にどう対応してゆくのか、制度導入に危機感を募らせて大声で反対する業界側とどう折り合いをつけるのか、まさに正念場の状況です。

大阪府議会が意見書を採択

そのような状況の中で、大阪府議会が、全国に先駆けて、「消費者が望まぬ勧誘を事前に拒否できる制度の特定商取引法への導入を求める意見書」を、今年10月27日に採択しました。

同意見書は、訪問販売や電話勧誘販売が「住まい」という本来ビジネスの場ではないところで、消費者の要請・同意なく行われる場合には、そのほとんどが迷惑なものであること、消費者がどのような商品を選択するかは自主的かつ合理的な選択に委ねられるべきであり、どのような勧誘を受けるかについても、消費者の自己決定が十分尊重されなければならないことを述べて、突然の訪問や電話による勧誘によって、高齢者などが断り切れずに不本意な契約をしてしまうことも少なくないし、ときには悪質・不当な勧誘によって深刻な被害を受けることもあるという実態を指摘しています。そして現在の特定商取引法の規制では、消費者は事業者による突然の訪問や電話に応答した上で、拒絶の意志を伝えなければならず、平穏な生活を送ることが出来ないし、一旦、巧みな勧誘が開始されてしまうと断ることは容易でなく、高齢者は特に交渉力などが低下していることもあるからその傾向が顕著であるとしています。不招請勧誘の問題点と高齢者被害が増加している理由を的確に指摘したものといえるでしょう。

そして意見書の結論は、「消費者の平穏な生活と自己決定を尊重し、望まぬ勧誘を回避するとともに、消費者トラブルを予防するため、勧誘の事前拒否が保障される制度(例えば、訪問販売においては、『勧誘お断り』のステッカーに法律上の効力を認めるなど、電話勧誘販売においては、『電話勧誘拒否登録制度』の創設など)を導入する必要がある。なお、この制度はあくまで、勧誘を望まない意思を明確にした事前拒否者に対してのみ訪問勧誘、電話勧誘を禁止する制度であり、事業者への影響は必要最小限のものである。よって、国においては、特定商取引法を改正し、訪問販売及び電話勧誘販売において、消費者が望まぬ勧誘を事前に拒否できる制度を導入されるよう要望する。」という締めくくりになっています。

大阪の政界では、知事と市長のダブル選挙で、大阪都構想の是非を巡って、府議会でも与野党の対立が鮮明化しています。そのような状況の中でも、高齢消費者被害の問題を的確に把握し、タイムリーに、先進的で格調の高い意見を国に発したことは、大阪府議会の見識の高さを示すものといえましょう。

今後、地方議会から更にこのような意見が続いてゆくとすれば、いずれ我が国でも、DNC/DNK制度が導入されてゆくでしょう。訪問販売や電話勧誘販売の業態においては、新たなビジネスモデル構築の準備が必要と思われます。

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