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相続

平成26年9月30日

7.不動産の相続

今回は、相続財産に不動産が含まれている場合の問題点についてお話しします。遺産分割に際し、不動産は、①分割方法、②不動産評価の二点で問題が生じ得ます。

普通の人が遺す遺産としては、ローンを終えた自宅土地建物と、老後資金として蓄えていた現金預金の残りというのが代表格でしょう。

不動産として自宅土地建物しかない場合、二人以上の相続人がいると、これを法定相続分に従って現実に分割すること(現物分割)はできません。従って、(a)誰かが単独で相続するか、(b)相続人全員の共有にするか、(c)売却してその代金を分けるしかありません。

お父さんが亡くなり、お母さんが自宅で生活しておられる場合は、とりあえず自宅土地建物には手を付けないか、一応「共有にしておく」こともあるようですが、いずれにしても解決の先送りに過ぎず、最終的解決にはなりません。

結局、いつかの段階では(a)か(c)の方法を検討せざるを得なくなります。これが上記①の問題です。だれも住む人がいない場合は、(c)の方法を取ることもできますが、父母と同居しておられた、例えば長男さんがおられる場合は、長男さんが居住の継続を望まれることが多く、売却は困難です。

このような場合、長男さんは上記(a)の単独相続を望まれますので、まず試みられるのは、代償分割という方法です。これは、長男さんが土地建物全部を相続する代わりに、二男さんや長女さん等、他の相続人に、相続分相当額の金銭(代償金)を支払うという分割方法です。この場合は上記②の「評価」が問題になります。支払う方は安い方が良いですし、貰う方は高い方が良いわけですから、自宅土地建物の評価を巡って争われることはよくあります。

ただ、どう評価するにしても、代償金を支払う方には相当な金銭が必要です。それが用意できないのであればその方法は採れません。二男さんや長女さんらは、別に自宅を確保されていることが多いので、代償金を用意してまで実家の土地建物を相続しようとされることは少ないです。そうすると売却してその代金を分けるしか方法はないではないか、ということになりますが、前記のように、長男さんが嫌だと言えば売れません。長男さんにしても、親の世話をするために同居していたのに、相当な年齢になってから、「自分の家は自分で買え」と言われても、年齢的にローンも組みにくく、なかなか自宅の売却に「うん」とは言えない事情もあります。

二男さんや長女さんらの相続分の売却は理論上可能ですが、現実の問題として、買ってくれる人はまずいません。

そこで、以前申し上げた話ではありますが、ほぼ唯一の遺産になると思われる自宅土地建物を長男さんに遺したいというのであれば、長男さんを受取人とする生命保険を掛けておくべきだということになります。生命保険金は遺産ではありませんので、長男さんはそれを上記代償金にすることができます。自宅土地建物を長男さんに相続させるという遺言書を作成しておけば、親の意思、希望が明らかになるとともに、二男さんや長女さんには遺留分しかなくなりますので、生命保険金もそれほど多額でなくても良いということになります。

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