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税制知っ得

平成26年9月19日

2.生前贈与を有効に活用しよう

相続が生じた場合、基礎控除額を差し引いた正味の遺産がある場合には、相続税が課されます。これをできるだけ節税したい、そのために有効な方法の一つに「生前贈与」があります。

「生前贈与」とは、贈与者が生きている間に、贈与を行うことです。贈与もまた課税の対象となりますが、年間110万円までは基礎控除が認められているので課税されません(暦年課税・相続税法21条の5、租税特別措置法70条の2の3第1項)。

これを利用してよく行われるのが、基礎控除額110万円の範囲内で、毎年贈与を続けるということです。また、贈与税というのは、贈与者ではなく、取得した側に課税されるものですから、贈与者が複数人に110万円ずつ贈与しても課税はされません。例えば、おじいちゃんが、10人の孫に10年間贈与し続けた場合、合計1億1100万円にもなります。この分相続税を節税できるのですから、地道な努力は大きな効果を生むと言えますね。

しかし、何点か注意すべきポイントがあります。

まず、相続開始日の3年前以降になされた贈与については、相続税が課される財産に含まれるという点です(相続税法19条)。

これは、亡くなる直前に、駆け込みで贈与し、相続税の課税を回避することを防止するためです。

ですから、被相続人が元気なときから、地道にコツコツと贈与を続ける必要がありますね。

また、毎年定額贈与し続けることを、贈与者と受贈者で約束している場合に、贈与開始時に全額について贈与する意思があったと認定され、贈与税が課される可能性があります。

先ほどの例で言うと、おじいちゃんが孫に、1100万円を毎年110万円ずつに分けて贈与するよ、と約束している場合には、贈与を始めた年に1100万円を贈与する意思があったとみなされ、贈与税を課税される可能性があるのです。

税務署からこのように認定されるのを防ぐためには、贈与の額を定額にしない、例えば、基礎控除額110万円よりも少ない額にしたり、時には多めにしたりすることが考えられます(贈与額が110万円を超えると、当然贈与税がかかってきますが、全額について一括贈与の潜脱と認定されて多額の課税がなされるよりは、いくらかでも支払っておくのが良いでしょう)。また、贈与する財産を毎年変更するという方法もあります。

また、贈与をしたことを、客観的な証拠をもって明らかにしておきましょう。契約書を作成する、移転登記手続を行う、銀行口座にお金を振り込む等。贈与は口頭の約束でも成立しますが、相続財産と認定されないようにするためには、証拠をつくっておくことが重要です。

なお、相続税法は平成25年に大きな改正があり、平成27年1月1日から新たな制度が運用されます。改正の大きなポイントは、

①遺産に係る基礎控除額が引き下げ

(従前)5000万円+(1000万円×法定相続人)

→(改正後)3000万円+(600万円×法定相続人)

②最高税率の引き上げ

各法定相続人の取得金額が6億円を超える方について、

(従前)50% →(改正後)55%

なお、取得金額が1億円を超える方は、税率の区分が細分化され、引き上げられています。詳しくは国税庁のホームページをご確認ください。

③未成年者控除及び障害者控除の控除額の引き上げ

(従前)未成年者が満20歳になるまでの年数1年につき6万円

障害者が満85歳になるまでの年数1年につき6万円

→(改正後)上記金額が1年につき10万円に。(なお、特別障害者の場合は従前の12万円から20万円に拡大されます。)

④小規模宅地等の特例の限度面積の拡大

(従前)240㎡ → (改正後)330㎡

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