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税制知っ得

平成25年6月13日

15.役員報酬の決め方

会社の役員の報酬は、定款で定めるか、株主総会の決議で決めることが要求されています(会社法361条1項)。役員報酬は業績に応じて毎年変更される可能性がありますから、定款で定めると役員報酬を変更する度に改訂が必要となってしまうので、株主総会で決定する会社が大半だと思います。

 

役員報酬は、原則として損金算入されるのですが(法人税法34条)、損金算入するためにはいくつか条件があります。

まず、以下の3つのうち、いずれかに該当する必要があります。

 

定期同額給与法人税法第34条1項1号

1月以下の一定期間ごとに同額の支給がなされるものをいいます。例えば、「1月から11月までが50万円、12月のみ100万円」というようなことは許されません。期末に近づき、「このままだと利益が出てしまうから役員報酬を多めにしよう」というようなことを認めないようにするためです。

 

事前確定届出給与同1項2号

所定の時期に確定額を支給する旨の定めに基づいて支給されるものをいいます。一年のうち一時期しか職務を行わない役員(例えば、非常勤の監査役等)については報酬は年を通して1度、というのはよくあることです。事前に支給額を決めて税務署に届け出ることを要件とすることで、損金算入を認めています。

利益連動給与(同1項3号

利益に連動して支給されるものをいいます。これを容易に認めると、利益調整を防止するという定期同額給与の損金算入の趣旨に反することになります。そのため、利益連動給与を損金算入するためには、厳しい要件が課せられています。まず、同族会社についてはこの方法は認められません。そして、給与の算定方法については、有価証券報告書に記載された利益に関する指標を基礎として客観的に決められることが必要とされています。

 

また、不相当に高額な部分の支払や、事実の隠ぺいや仮装の経理に基づく支払は、損金算入されません同34条2項3項)。50万円が妥当な金額であるのに、80万円支払った場合は、30万円が損金不算入となります。

では、役員報酬として相当な額とはどのように決めるのでしょうか

これは、実質基準と形式基準と呼ばれる基準から相当額を計算します。次に相当額の小さい方を選びます。実質基準とは、役員の職務の内容、会社の収益、従業員に対する給与の支払状況、同種事業で事業規模が類似する会社の役員に対する給与の支払状況等に照らして判断する基準です(法人税法施行令第70条1項イ)。一方、形式基準とは、定款の規定、株主総会により決められた限度額のことを指します(同法施行令第70条第1項ロ)。これらに照らし、相当と認められる額を超える部分が損金不参入となるわけです。

 

では、上記の基準に添って、具体的に役員報酬の額をどのように決めるのがベストでしょうか

適切な役員報酬を決めるには、事業計画を立てることが必須です。何も考えないまま、「生活費として○円必要だから、○円にしておこう」等という決め方をすると、資金繰りに窮するようになったり、慢性的に赤字になったり、逆に、予想外に利益が出て多額の法人税を支払うことになったりします。

また、役員報酬の額は法人税を左右する一方、当然、報酬をもらう役員の所得税にも関わってきます。役員報酬を増やすと、より多くの金額を損金算入でき、法人税は減ります。一方、役員個人の所得税の額が増えることになります。逆に、役員報酬を減らすと、役員個人の所得税額は下がりますが、法人税の額は増えることになります。さらに、法人住民税、事業税、個人の住民税も関わってきます。

また、社会保険料を考慮することも忘れてはいけません。例えば、大阪在住の50歳男性で月額の役員報酬が50万円の場合、会社負担の健康保険料は29,025円、厚生年金保険料は41,915円で合計70,940円と結構な負担になります(協会けんぽの保険料率〔平成25年6月現在〕による)。これと同額を役員個人としても負担することになります。ちなみに、会社負担分の社会保険料は法定福利費として損金算入することができます。

 

小規模な会社ほど、個人(経営者)と会社の関係が密接になります。会社と役員個人の双方の観点から、役員報酬をいくらにすれば一番節税になるか、シミュレートしてみる必要があります。適当に決めてしまってはいけません。

そして、上述したとおり、役員報酬は一年に一度株主総会で決定すると、その後1年間は変更できないため、よく検討して決める必要があります。具体的な計算は、当事務所までお問い合わせください。

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