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税制知っ得

平成30年4月7日

46.事業承継税制の改正

はじめに

平成30年税制改正(所得税法等の一部を改正する法律)の一つの目玉は、事業承継税制の要件の緩和による使い勝手の飛躍的改善です。事業承継税制については、平成20年の「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」(以下「承継法」といいます。)制定から、いくつかの改正を経てきたところ、この度の改正では、従前の承継法を前提にしつつ、更に特例の立法(租税特別措置法70条の7の5ないし70の7の8)(以下、「承継特例法」といいます。)がなされました(平成30年3月28日成立)。抜本的な改正です。

なお、政令に委任してある事項(例えば、先代経営者の要件など)についても、法律が未成立なので政令も制定されてされないのは当然ですが、その点は税制改正大綱を前提に規定しています。

 

承継特例法の概要

承継特例法は、基本的に承継法の仕組を前提にしています。承継法では、① 事業承継税制(非上場株式等についての相続税・贈与税の納税猶予制度)、②遺留分に関する民法の特例、③事業承継時の金融支援措置よりなる事業承継円滑化のための制度がラインアップされています(厳密には、税制関係は租税特別措置法70条の7ないし70条の7の4が手当てしています。)。承継法について、平成29年までの制度については、こちらをご覧ください。

承継特例法は、承継法の仕組みを抜本的に使いやすくしたものです。従前の承継法の要件効果と対比することでその効能がわかりやすくなりますので、対照表をまとめてみました。

ただし、承継特例法は、平成30年4月1日から5年間の間に特例承継計画が提出された贈与(平成30年1月1日から平成35年3月31日までに生じた相続も可。)が対象となりますので、注意してください。

いずれにしても、仔細の要件及び手続については、今後、下位法の制定により明らかになりますので、注意しておきたいところです。

   

相続税・贈与税の猶予の要件と効果について対照

   

 

 

承継法 承継特例法
要件 ①事業承継者の要件 承継者一人が株式を承継する場合のみ。 代表権を有する複数人(最大3名)への承継も可。
②先代経営者の要件 先代経営者一人から株式を承継する場合のみ(*)。 複数人(代表者以外の者を含む)からの承継も可。
③5年間の事業継続要件 5年平均で承継当初の雇用の8割以上を維持。 8割以上の雇用継続ができなくても納税猶予は継続。
④5年経過後の要件    
⑤認定対象会社の要件    
⑥免除要件 民事再生・会社更生時の株式の価額で相続税を再計算し、超える部分の猶予税額を免除。 一定の要件を満たす場合には、株式の譲渡または合併の対価の額または解散の時における相続税評価額を基に、納付金額を再計算し、その納付金額が当初の納税猶予税額を下回る場合、差額は免除
効果 猶予税額 最大、発行済議決権株式総数の3分の2に達するまでの株式について、全税額(相続税は80%)。 取得した全ての株式について、全税額。

 

なお、H30年改正により、推定相続人等以外の後継者に相続時精算課税贈与の適用が認められるようになります。

* H30年改正により、複数人(代表者以外の者を含む)からの承継も可。

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