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税制知っ得

令和4年8月10日

69.グループ通算制度のメリット⑧(その他の国際課税関係制度)

はじめに

各論の第8回目は、グループ通算制度における外国税額控除以外の国際課税関係制度について説明します。その他の国際課税関係制度には、外国子会社配当金の益金不算入、移転価格税制、過少資本税制、外国子会社合算税制、過大支払利子税制があります。これらのいずれについても、単体納税制度と同様、各通算法人で適用しますが、適用要件の判定において、グループ全体の数値で判断される場合があります。

 

その他の国際課税関係制度

(1) 外国子会社配当金の益金不算入

外国子会社配当金の益金不算入とは、外国子会社から日本の親会社に支払われる配当(外国において法人税が課された後の利益から支払われる)については、親会社の益金に算入せず、課税しないとするものです。その趣旨は、国際的な二重課税を排除することにあります。

 

(2) 移転価格税制(国外関連者との取引に係る課税の特例)

移転価格税制とは、我が国の法人と海外に所在する親会社、子会社等の特殊関連企業との間の取引の対価の額が通常の取引価格と異なることにより、我が国の法人の課税所得が減少することとなる場合に、国外関連者との取引を独立企業間価格(後述)で行ったものとみなしてその法人の各事業年度の課税所得を計算するものです。その趣旨は、諸外国との共通の基盤(独立企業原則)に立って所得の海外移転を防止し、適正な国際課税を実現することにあります。

 

(3) 過少資本税制(国外支配株主等に係る負債の利子等の課税の特例)

過少資本税制とは、海外の関連企業との間において、内国法人に対する出資に代えて貸付けを多くした場合、一定の割合を超える支払利子の損金算入を認めないこととするものです。その趣旨は、出資を少なめにし、借入金を多くすることによる我が国の税負担の軽減を防止することにあります。

 

(4) 外国子会社合算税制(内国法人の外国関係会社に係る所得の課税の特例)

外国子会社合算税制とは、一定の税負担の水準以下の国・地域にある子会社等の所得を、内国法人等の所得とみなして合算して課税するものです(但し、実態を伴って活動をしている子会社等には課税されない)。その趣旨は、内国法人が税負担の著しく低い外国会社等を通じて国際取引を行うことで、我が国の税負担を不当に軽減・回避することを防止することにあります。

 

(5) 過大支払利子税制(関連者等に係る純支払利子等の課税の特例)

過大支払利子税制とは、所得金額に比して過大な利子を国外の関連者に支払う場合に、そのうち一定割合を超える支払利子の損金算入を認めないものとするものです。その趣旨は、内国法人が過大な利子を関連者に支払うことで、我が国の税負担を軽減・回避することを防止することにあります。より厳密には、移転価格税制では、過大な利率の水準に対しては対処できますが、過大な利子の額に対しては対処できないこと、過少資本税制では、負債の水準が資本に比して過大な利子に対しては対処できますが、借り入れと同時に増資することで支払利子の額を増やすことに対しては対処できないという限界があります。そこで、本制度は、移転価格税制と過少資本税制を補完するものです。

単体申告の場合

以下に、上記各国際課税関係制度の適用要件および効果の概要を示します。

(1) 外国子会社配当金の益金不算入

要件:

内国法人の25%の持ち株要件および6か月保有要件(配当金支払義務確定日以前)

効果:

益金不算入額剰余金の配当等の額×95%

(2) 移転価格税制

要件:

ア 以下に掲げる者(「国外関連者」)との取引であること

① 一方の法人が他方の法人の発行済株式等の50%以上を直接・間接に保有する関係(「親子関係」)

② 二つの法人が同一の者(個人を含む)によってそれぞれの発行済株式等の50%以上を直接・間接に保有される関係(兄弟関係)

③ 一方の法人が他方の法人を実質的に支配している関係(「実質支配関係」)

④ 持株関係と実質支配関係の複合的な連鎖関係がある場合のタテまたはヨコの関係(「連鎖関係」)

イ その法人がその国外関連者から支払いを受ける対価の額が独立企業間価格(注1)に満たない場合、または、その法人がその国外関連者に支払う対価の額が独立企業間価格を超える場合(そのような金額を「国外移転所得」といいます)

 

注1

独立企業間価格とは、所定の独立企業間価格の算出方法(例えば、独立価格比準法など)に基づき、算定した金額をいいます。

 

効果:

損金不算入額国外移転所得(注2)

注2

独立企業間価格-支払を受ける対価の額(安売りの場合)、または、支払う対価の額-独立企業間価格(高く買う場合)をいいます。寄附金の額は除きます。

 

(3) 過少資本税制

要件:

ア 総負債要件

各事業年度の総負債に係る平均負債残高×自己資本額

イ 個別負債要件

注3 50%超の持分を直接・間接に保有または実質的に内国法人を支配している非居住者等(「国外支配株主等」)であること

 

注4 国外支配株主等以外で内国法人に資金を供与等している一定の者(「資金供与者等」)

 

効果:

損金不算入額保証料等(注5)負債利子等の金額(注5)

注5 国外支配株主等の資本持分の3倍と基準となる平均負債残高との大小関係に応じて計算された金額です。

(4) 外国子会社合算税制

要件:

ア 居住者・内国法人等が合計で50%超の持分を直接・間接に保有または実質的に外国法人を支配している場合(その法人を「外国関係会社」といいます)で、

イ ① 外国関係会社がペーパーカンパニーなどに当たるとき(その法人を「特定外国関係会社」といいます。)

② 能動的所得を得るために必要な経済的活動の実体を備えていないとき(その法人を「対象外国関係会社」といいます。)

③ 対象外国関係会社の税負担割合が20%未満であり、かつ、一定の受動的所得(例え  ば配当、利子)を有するとき

 

効果:

益金算入額課税対象金額(注6)×その内国法人の直接・間接の持分割合等(注7)

注6

イ①および②の場合は、日本の法人税法または外国関係会社の本店所在地法令により計算した所得金額(「基準所得金額」)、イ③の場合は、一定の受動的所得を所定の方法で計算した金額(「部分適用対象金額」)をいいます。

 

注7

直接・間接の保有割合が10%以上であること等が納税義務者の要件です。また、外国関係会社の事業年度終了の日の翌日から2か月を経過する日を含むその内国法人の各事業年度の益金の額に算入します。

 

(5) 過大支払利子税制

要件:

対象純支払利子等の額(注8)調整所得金額×20%

注8

対象純支払利子等の額とは、基準となる支払利子等の合計額(受領者において日本の課税対象所得に含まれる支払利子等を除いたもの≒国外関連者・国外非関連者に対する支払利子等の合計額)からこれに対応する受取利子等の合計額を控除した金額です。

なお、「関連者」とは、①一方の法人が他方の法人の発行済株式等の50%以上を直接・間接に保有する関係(「親子関係」)、②二つの法人が同一の者(個人を含む)によってそれぞれの発行済株式等の50%以上を直接・間接に保有される関係(兄弟関係)、③一方の法人もしくは個人が他方の法人を実質的に支配している関係(「実質支配関係」)をいいます。

調整所得金額(注9)=当期の課税所得金額+減価償却費等+対象純支払利子等の額

注9

所定の計算方法で計算した所得金額に純支払利子等の額を加え利払い前の所得を基準にしています。

効果:

損金不算入額対象純支払利子等の額調整所得金額×20%

グループ通算制度の場合

以下の図の指で指し示された段階の扱いの問題です。

 

(1) 外国子会社配当金の益金不算入

外国子会社の判定について、25%以上の持ち株割合及び6か月の保有期間であるかどうかは、グループ全体で行います。

 

(2) 移転価格税制

単体申告の場合と異なりません。

 

(3) 過少資本税制

単体申告の場合と異なりません。

 

(4) 外国子会社合算税制

単体申告の場合と異なりません。

 

(5) 過大支払利子税制

適用免除の判定について、グループ全体で行います。すなわち、通算法人および他の通算法人の対象純支払利子等の額の合計額から対象純受取利子等の額の合計額を控除した残額が、2,000万円以下であるかどうかになります。

 

まとめ

外国税額控除以外の国際課税関係制度の適用について、通算法人の場合でも、単体申告の場合と異なりません。しかし、外国子会社配当金の益金不算入および過大支払利子税制の適用要件はグループ全体で判断されることになっています。

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