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社会保険労務

平成27年3月31日

24.マイナンバー制施行に向けた人事総務対策について②

前回、マイナンバー制の概要と企業に与える影響及び概括的な対策についてお話しました。

今回は、具体的な対応として、従業員からのマイナンバーの取得と本人確認を行う段階において概要と留意すべき点についてご紹介します。

事前準備

前回、遅くともマイナンバー利用が開始される平成28年1月の時点では、番号の取得及び本人確認が完了していることが理想である、とお伝えしました。

では、それに向けてどのような準備が必要でしょうか

まず、番号の取得にあたり、番号の利用が想定される業務を予め明示しておく必要があります。そのためにはマイナンバー制の対応が必要な手続や書類の洗い出し作業を十分に行い、社内通知や就業規則といった方法で包括的に列挙(源泉徴収、健康保険、雇用保険手続など)して明記しておくといった対応が必要です。

また、マイナンバーは今年(平成27年)10月以降に各自に「通知カード」というかたちで各自に通知されますので、紛失等を防止するため、事前に大切に保管するようアナウンスしておいた方がいいでしょう。そして、取得にあたっては本人確認が必要であることと、本人確認に必要な書類を事前に伝えておきます。平成28年1月以降は、顔写真付でICチップが内蔵された「個人番号カード」を任意で取得できますが、「個人番号カード」があれば本人確認が比較的容易である旨も周知しておきましょう。

マイナンバーの取得や本人確認にあたっては従業員から様々な問い合わせが来る可能性もありますので、対応できるように担当者も十分な準備が必要です。

本人確認の方法(必要な書類)

最初に、従業員からマイナンバーの提示と本人確認関係書類の提出を受けます。

本人確認を行う内容は「本人の実存性」(身分証明書で提示した者が本人か否か)と「番号の真正性」(番号記載書類で提示した番号が正確か否か)の2点です。

まず本人の実存性については、

① 個人番号カード

② 写真付き身分証明書1点(運転免許証、パスポート、身体障害者手帳など)

③ 写真付き身分証明書の提示が困難なときは2点以上の書類(例えば、健康保険被保険者証、国民年金手帳、住民票の写しなど)

①~③のいずれか1つで確認を行います。

番号の真正性については、

① 個人番号カード

② 通知カード

③ 個人番号記載の住民票の写し

④ 個人番号記載の住民票記載事項証明書

①~④のいずれか1つで確認する必要があります。

つまり、個人番号カードがある場合はそれだけで本人確認は可能であり、個人番号カードがない場合は、通知カードと運転免許証などでOKということになります。

担当者は提示された書類に不備がないかをチェックし、不備がある場合は再提出を促します。

本人確認は、原則として、マイナンバーそのものの提示の他に、マイナンバーが記載された書類提出の「都度」行う必要がありますが、2回目以降は、初回に本人確認を行って取得したマイナンバーの記録を照合して、会社が記載欄に直接転記する方法を行うことは認められます

なお、確認書類の保管は不要ですが、本人確認のエビデンスを残しておく意味でも、いつ、どこで、どの担当者が、どの対象者を、どの手段で本人確認を行ったかを記録しておくことが望ましいでしょう。

留意すべき点

(1) マイナンバー取得及び本人確認の対象となるのは、正社員だけではなくパートタイマー・アルバイト、外国人労働者や外国人技能実習生も対象となります。なお、派遣社員については派遣元が行いますので、派遣先企業がマイナンバーを求めることはできません

また、被扶養家族についても、マイナンバーの取得が必要となります。例えば、A社で勤務する従業員Xの配偶者YがB社でパートタイマーとして勤務している場合、Yは、従業員としてB社に対してマイナンバーを提供するとともに、A社にも従業員Xの扶養家族としてマイナンバーを伝える必要があります。

この点、被扶養家族の本人確認には注意が必要です。すなわち、年末調整時の扶養控除等(異動)申告書に記載する場合には、従業員本人が「個人番号関係事務実施者」として本人確認を行うことができるのですが、国民年金第3号被保険者(従業員の配偶者)に関わる手続は、第3号被保険者が直接会社に届出を行うことになっているので、原則として、従業員ではなく、会社が当該第3号被保険者の本人確認を行わなければならないことになります。よって、それが難しい場合は、従業員が代理人として書類を提出することで会社が本人確認を行うか、本人確認を行う事務を従業員に委託する方法をとる必要があります。

従業員が代理人として番号取得及び本人確認を行う場合、会社は、①代理権、②代理人の身元、③本人の番号の3つを確認する必要があります。①は戸籍謄本、委任状、②は代理人の個人番号カード、運転免許証など、③は本人の個人番号カード、通知カード、マイナンバーの記載された住民票の写しなどで確認を行うことになります。

 

(2) 従業員が出向や転籍をする場合、会社が合併する場合の取扱いはどうなるのでしょうか。

まず、出向や転籍に伴い、給与支払者が異動先の会社に変更となる場合は、異動先会社で改めて個人番号の取得と本人確認が必要となります。この場合、出向・転籍元の会社が受託者となって本人確認を行った上で、出向・在籍先にマイナンバーを含む特定個人情報を提供することは認められます。

また、合併による事業承継の場合は、特定個人情報の承継が可能であり、改めての番号取得及び本人確認は不要とされています(ただし取得時に明示された範囲を超える目的での利用は不可とされていますので注意が必要です)。

 

(3) マイナンバー法上は、従業員から強制的にマイナンバーを取得することはできません。そこで、従業員からマイナンバーの提供を拒否された場合の対応が問題となります。

まず、会社としては、記載が求められる各書類にはマイナンバーを記載する義務があること及び記載できない場合に起こりうる不利益について説明し理解を求めることが大事です。研修や説明会等で社内啓発を促しておくことも重要です。それでも拒否される場合は、提出先の機関の指示に従うことになります。

 

以上、今回は、マイナンバー取得と本人確認手続に関してお話をしました。次回は、マイナンバーの利用・提供及び廃棄手続を中心にお話をさせていただく予定です。

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