トップページ > 融資の受け方④ -自己査定-
金融機関から一度融資を受けて事業を運転してきたところ、設備投資をするために資金が必要になったり、予想外の事態が生じてそれを乗り越えるために資金が必要になったりする場合もあります。こんなとき、スムーズに融資を受けるにはどうしたらいいか。金融機関側の事情を知っておくことも重要です。
金融機関が行う「自己査定」をご存知でしょうか。
「自己査定」とは金融機関が保有する資産を、金融機関の基準を用いて自ら査定・評価し、回収の危険性や価値の既存の度合いに応じて分類・区分することを通じて、資産内容を正確に把握することを言います。簡単に言うと、銀行が融資している取引先の格付けを行うということです。
どのように格付けされるかというと、以下のようになっています。
【債務者区分】
正常先 | 業況が良好であり、かつ、財務内容にも特段の問題がないと認められる債務者 | |
---|---|---|
要注意先 | 金利減免・棚上げを行っているなど貸出条件に問題のある債務者、元本返済もしくは利息支払いが事実上延滞しているなど履行状況に問題のある債務者のほか、業況が低調ないしは不安定な債務者又は財務内容に問題がある債務者 | |
要管理先以外 | 要注意先のうち、要管理先以外の債務者 | |
要管理先 | 要注意先のうち、3か月以上延滞または貸出条件を緩和している債務者(債権の全部または一部の金融再生法に定める要管理債権である債務者) | |
破綻懸念先 | 現状、経営破綻の状況にはないが、経営難の状態にあり、経営改善計画等の進捗状況が芳しくなく、今後、経営破綻に陥る可能性が大きいと認められる債務者(金融機関等の支援継続中の債務者を含む) | |
実質破綻先 | 法的・形式的な経営破綻の事実は発生していないものの、深刻な経営難の状態にあり、再建の見通しがない状況にあると認められるなど実質的に経営破綻に陥っている債務者 | |
破綻先 | 法的・形式的な経営破綻の事実が発生している債務者 |
(金融検査マニュアルより)
では、このような区分は具体的にどのような基準で行うか。
まずは、やはり決算書です。直近2,3年の決算書を見て、会社の安全性・収益性・成長性・返済能力等を検討します。それに加え、営業力・技術力・経営者の資質等も確認します。前者を定量分析、後者を定性分析と呼びます。
この区分分けは、銀行が内部で一方的に行っているものですが、融資の判断と強く関連するものであり、当然、皆さんの会社も無関係ではありません。
一般的に、企業は、取引先に対する金銭債権の回収可能性を検討して、各事業年度の決算期末において、貸倒となりうる額を予想し、費用又は損失として引当金に繰り入れます。金融機関は、上記の自己査定に基づき、過去の実績や将来の見通しを踏まえ、債務者区分に対応した引当率を設定しています。
某銀行の某年の引当率を見てみましょう。
正常先 | 0.23% | |
---|---|---|
要注意先 | ||
要管理先以外 | 6.53%(14.14%) | |
要管理先 | 56.75% | |
破綻懸念先 | 77.14% | |
実質破綻先 | 100% | |
破綻先 | 100% |
(*「要管理先」の( )内の数字は、担保・保証等により回収可能部分の金額を除いた残額に対する引当率です。)
簡単に言うと、期末の債権残高に、この引当率を乗じた額を貸倒引当金として計上するのです。この引当率は、銀行により、また、事業年度により異なるのですが、共通しているのは、債務者区分が要管理先以下になると、引当率が急に上がるということです。
例えば、年利3%で1000万円の債権がある取引先が、「正常先」から「要管理先」にまでランクダウンしてしまったとしましょう。すると、
1000万円×3%=30万円(収入)
1000万円×56.75%=567万5000円(損失)
567万5000円-30万円=537万5000円の赤字ということになります。
こうなると、金融機関としても、「こんな企業にはこれ以上貸したくない、むしろ、貸しているお金を早く返して欲しい」と考えることになります。
簡略化して説明しましたが、個別の債権についても、担保や保証で保全されているものといないものの違い、回収可能性等を鑑みて、ⅠからⅣの分類に分け、これに債務者区分を掛け合わせて、より細かい分類がなされています。その詳細な分類に応じて、処理の方法が異なってきます。全国銀行協会のHPに、無料の刊行物がデータで掲載されております。より詳しくお知りになりたい方は、こちらをご確認頂ければと思います。
銀行から融資を受けるためには、「正常先」又は少なくとも「要管理先以外の要注意先」に入っていることが必要になってくるでしょう。
債務者区分は、一般的には公開していません。容易に教えてもらえるものでもありませんが、銀行の担当の方と何度も話をし、信頼関係を築く中で、一度聞いてみられてもいいのではないでしょうか。
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