平成26年11月29日
以前、ご紹介させていただいた「キャリアアップ助成金」について、その活用方法についてご提案させていただきます(キャリアアップ助成金の全体的な概要についてはこちらをご覧下さい。この助成金は、比較的支給額が高額である上に、平成26年3月1日から平成28年3月31日の期間限定で、支給額の増額あるいは要件の緩和を図っており、今が狙い目です。労働者の意欲、能力を向上させ、事業の生産性アップ、優秀な人材確保を図る上で是非活用したい助成金といえます。
今回はその活用例として、派遣社員の方を対象に、「人材育成コース」及び「正規雇用等転換コース」を申請する場合についてご紹介いたします。
支給額の試算
① 人材育成コース
派遣労働者の場合、紹介予定派遣に係る派遣労働者として、有期実習型訓練(OJTとOff-JTを組み合わせた3~6ヶ月の職業訓練)を実施する派遣元事業主に雇用され、派遣先事業主の指揮命令の下に労働する労働者が対象となります。
本コースの支給額は中小企業の場合、以下のとおりです(Off-JTの経費助成は、時間数にかかわらず一律10万円でしたが、一部増額されました)。
(平成26年3月1日から平成28年3月31日まで拡大された金額)
Off-JT分の支給額 賃金助成・・・1人1時間当たり800円(500円)
経費助成・・・Off-JTの訓練時間数によって以下のとおり
100時間未満の場合:1人当たり10万円(7万円)
100時間以上200時間未満の場合:1人当たり20万円(15万円)
200時間以上の場合:1人当たり30万円(20万円)
OJT分の支給額 実施助成・・・1人1時間当たり700円(700円)
※1年度1事業所当たりの支給限度額は500万円
例えば、紹介予定派遣として派遣されてきた派遣労働者1名に対して、6ヶ月間でOff-JTを50時間、OJTを400時間実施した場合で、Off-JTにかかる研修費用が10万円かかったとすると、
Off-JT分の支給額として、賃金助成が、800円×50時間=4万円
経費助成が、10万円
OJT分の支給額として、賃金助成が、700円×400時間=28万円
で、合計42万円の助成を受けることができる計算になります。当然、人数が増えればその分助成金額も増えます(ただし上限は500万円)。
② 正規雇用等転換コース
正規雇用等転換コースの対象となる派遣労働者は、派遣期間が6ヶ月以上の派遣場所で就業している派遣労働者です。上記の人材育成コースの対象は紹介予定派遣に係る派遣労働者であり、紹介予定派遣の派遣期間は最大でも6ヶ月ですので、両方のコースの適用を受けるためには、派遣期間を6ヶ月と設定しておく必要があります。
中小企業の場合の支給額は、以下のとおりです(①と③はそれぞれ10万円増額されています)。
転換等の内容 | 1人あたりの支給額 | 母子家庭の母等または父子家庭の父の場合の加算額 |
---|---|---|
①有期労働→正規雇用 | 50万円 | 10万円 |
②有期雇用→無期雇用 | 20万円 | 5万円 |
③無期雇用→正規雇用 | 30万円 | 5万円 |
※1年度1事業あたり15人(②は10人)まで支給
さらに、上記支給額に加え、派遣労働者については、正規雇用労働者として直接雇用に転換した場合、1人当たり10万円が加算されます(ただし、転換後6ヶ月以上継続して雇用していることが必要)。
つまり、先ほどの例に挙げた派遣労働者について、6ヶ月の派遣期間が終了した後、派遣先が正規雇用に至った場合は、有期契約労働者から正規雇用に転換されたとして、50万円が支給される上に、10万円が加算され、計60万円が支給されるわけです。
よって、人材育成コースとあわせると、合計102万円の助成を受けることができます。15人までは、その人数分が支給されます。
なお、簡単な申請の流れは次のとおりです。
キャリアアップ計画書や訓練計画書の作成には時間を要しますので、余裕を持って、訓練の実施前3ヶ月前には計画の立案をしておきましょう。特に、先ほどの派遣社員の例では、申請元が派遣元と派遣先双方になり、キャリアアップ計画書は、派遣元と派遣先双方の管轄ハローワークに提出する必要があるなど、余計に手間がかかるので注意が必要です。
計画の立案にあたっては、研修をいつ開始するか、正社員転換予定をいつにするかを検討し、支給申請日と期限を確認しておきます。また、Off-JTの実施をどこに依頼し、具体的にどのようなスケジュールで行うのか、OJTの実施内容をどうするかを決定していくことになります。Off-JTは、外部の教育訓練機関で実施したり、外部講師を招聘して自社内で実施するほか、自社の従業員を講師として自社内で実施する方法でも行うことができます。
他にも、就業規則に正社員転換に関する規定がなければ改定と労働基準監督署への届出を、正社員転換時までに行っておく必要があるなど、申請にあたって必要となる書類や確認事項は多岐にわたります。活用をご検討の方は是非当事務所までご相談下さい。
なお、本助成金の詳細及びコース毎の支給要件等については、厚生労働省のHPをご覧下さい。
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