令和2年9月29日
概要
令和2年10月から、マイナポータルを活用した年末調整が始まります。マイナポータルと連携し、控除証明書等の必要書類のデータの一括取得、各種申告書への自動入力が可能となります。生命保険料控除、地震保険料控除及び住宅借入金等特別控除に係る控除証明書等について、勤務先に電子データにより提供できるようになります。
マイナポータルを利用することで、従業員と勤務先が年末調整に費やす手間と時間の負担が軽くなります。
ところが、現実は、マイナンバーカードの普及率は2割程度といわれ、従業員全員がマイナポータル連携を利用することでの勤務先の年末調整の完全ペーパーレス化はまだまだ先のようです。
また、このような前提で、後に述べるセットアップに必要な勤務先の年末調整ソフトの対応もまちまちです。
しかし、勤務先の規模や取組によっては、部分的でもペーパーレス化を実施できます。少しずつ移行していくのも一つの方策です。また、以下に述べる国税庁提供の年調ソフトの導入によっても少し負担が軽減されるかもしれません。
制度の概要と手続のポイント(従業員、勤務先(事業者))をまとめてみました。
マイナポータルを利用した場合の事務処理のイメージ
(国税庁パンフレットより引用)
マイナポータルを活用するためのセットアップ作業
(1)従業員
① マイナンバーカードの取得と読取機器の準備(見込日数最大2か月)
マイナンバーカードを取得することで、マイナポータルの利用に必要な利用者証明書用電子証明書がついてきます。
マイナンバーカードを読み取るためにICカードリーダライタまたはマイナンバーカード対応のスマートフォン等(以下、「読取機」といいます。)が必要です。
② マイナポータルの開設
読取機を利用してマイナポータルにアクセスし、利用者登録をします。
③ 年末調整申告書作成用のソフトウェア(年調ソフト)の取得
保険会社等から取得する控除証明書等データを利用して年末調整申告書データを作成するためのソフトウェアを取得します。
④ マイナポータルと民間送達サービスの連携
マイナポータルの「もっとつながる」機能から、民間送達サービスのアカウントを開設します。
⑤ 保険会社等への民間送達サービスのアカウントの登録
保険会社等へ上記の民間送達サービスの利用者IDを登録するなど、控除証明書データが届くよう設定します
。(2) 勤務先(事業者)
① 電子化の実施方法の検討
従業員が使用する年末調整申告書作成用のソフトウェア(年調ソフト)を選定します。
② 従業員への周知・協力依頼
従業員自身によるマイナポータルのセットアップが必要(上記(1)の内容)になるので、事前の協力依頼が必要になります。
なお、法令上事前に従業員から同意を得る義務はありません。
③ 給与システム等の改修等(→ソフトウェアのベンダーに確認)
従業員から提供を受けるデータを、事業者が利用している給与システム等にインポートし、年税額等の計算を行うためのシステムの改修等が必要です。
④ 税務署への届出(見込必要日数最少1か月)
従業員が勤務先に電子データにより提供するためには、勤務先があらかじめ給与支払事務所等の所在地の所轄税務署長に「源泉徴収に関する申告書に記載すべき事項の電磁的方法による提供の承認申請書」を提出し、その承認を受ける必要があります。この申請書は、提出した月の翌月末日までに税務署長から承認通知又は承認しないことの決定通知がなければ、その申請書を提出した月の翌月末日に承認があったものとみなされます。令和2年12月1日からこの制度の適用を受けようとする場合は、令和2年10月31日までに申請書を提出する必要があります。なお、一律電子化できない場合は引き続き書面によることができます。
マイナポータルを利用しない場合(従業員がマイナポータルを実施していない場合)
マイナポータルを完全実施できない場合でも、従来の紙ベースの処理に比べて、ある程度事務処理の簡便化を図ることができます。この場合のフローは以下の通りです。
従業員において、保険会社等のホームページから各種控除証明書等データを取得 |
↓ |
上記データを利用して年末調整申告書データを作成するためのソフトウェア(年調ソフト)を取得 |
↓ |
年末調整申告書データの作成 |
↓ |
勤務先へデータの送信 |
↓ |
勤務先において、上記データを利用して年税額等の計算 (給与システム等の改修が未了の場合データ連携は不完全な形です。) |