トップページ  >  連載  >  社会保険労務6

社会保険労務

平成24年11月1日

6.こんな助成金の利用を考えてみませんか?

助成金の活用が有益であることは前回の連載でご説明しました。

今回は、新規雇用に関わる助成金が大きな割合を占める助成金の中で、今旬と思われるものとして、以下の助成金をご紹介致します。

先日、高年齢者雇用安定法の改正法が成立し、来年4月1日から施行されることが決まりました。高年齢者の安定した雇用の確保を目的とした同法は、2004年にも改正されたのですが、その内容は、企業に、(1)定年の引上げ、(2)継続雇用制度の導入、(3)定年の定めの廃止、のいずれかを義務づけるというものでした。そのうち(2)については、労使協定により基準を定めれば希望者全員を対象としないという制度にすることも可能だったのですが、今回の改正により、その措置が出来なくなったのです。

これは、男性の厚生年金の報酬比例部分の支給開始年齢が来年4月より61歳に引き上げられる(最終的に2025年には段階的に65歳に引き上げられる)ことに伴い、雇用と年金支給との間に溝が出来ないようにするための改正です。

この点、これまで労使協定による措置を講じておられる企業も多いかと思いますが、今回の改正を受けて見直しが迫られることになります。

そこで、これを機に「定年引上げ等奨励金」を使って定年の引き上げ等をされることがお勧めです。企業規模にもよりますが、例えば定年を70歳以上に引き上げたり、定年の定めを廃止する、あるいは、70歳以上までの継続雇用制度の導入により40万~120万円が支給されたり、高年齢者の勤務時間を多様化する制度を導入すれば一律20万円が支給されたりします。

詳細については、高齢・障害・求職者雇用支援機構のHPをご覧下さい(http://www.jeed.or.jp/elderly/employer/subsidy/subsidy30-2.html)。

助成金にも旬なものとそうでないものがあります。厚労省が力を入れ始めている段階のものは、比較的要件が緩く窓口の対応も丁寧で利用しやすくなっているといえます。

この点、今年の3月に厚労省は、今後の非正規雇用対策の指針として「望ましい働き方ビジョン」というものをとりまとめました(http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000025zr0.html)。そこでは、今後、非正規労働者の増加を受け、非正規雇用対策へ強く乗り出す姿勢を打ち出しています。その一つに均等・均衡待遇の効果的促進が挙げられています。

上記指針を受けて、今後新たに助成金の設立等も予想されますが、現在ある助成金の中で先の要請に最も適った助成金は、「均衡待遇・正社員化推進奨励金」です。内容は、幾つかに分かれていますが、例えば、パートタイム労働者または有期契約労働者に対して、正社員への転換のための試験制度を導入し、実際に転換させた場合に、10人目まで奨励金を支給するというもの(中小企業主の場合、1人目40万円、2人目から10人目まで1人につき20万円)や、正社員と共通の処遇制度を導入し、実際に当該制度を適用させた場合に奨励金を支給する(中小企業主の場合60万円)といった内容のものがあります。

詳細については、厚労省のHPをご覧下さい(http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/part_haken/jigyounushi/index.html)。

厚労省は、今年8月31日に、同年7月の「雇用調整助成金」・「中小企業緊急雇用安定助成金」の利用申請事業所数が13ヶ月ぶりに増加したことを発表しました(事業所数は3万ヶ所を超えています)。増加に転じたのは東日本震災後に一番増えた昨年6月以来13ヶ月ぶりとのことです。

この助成金は経済上の理由で事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、労働者を解雇せずに休業や出向させるなどその雇用の維持を図る場合に、賃金の一部を助成するものです。

不正受給でも話題になりましたが、その影響なのか、厚労省は、景気の持ち直しを理由として、今年の10月1日からリーマンショック以前とほぼ同じ水準に支給要件や支給金額が見直されたため(但し東日本大震災で大きな被害を受けた東北3県は延期)、その利用はやや狭き門となりました。しかも、今後来年4月にも更なる見直しがなされる予定で、要件がさらに厳しくなることが予想されます。ここ数ヶ月がこの助成金の申請を行う最後のチャンスといえるかもしれません。

詳細については、厚労省のHPをご覧下さい(http://www.mhlw.go.jp/general/seido/josei/kyufukin/a05-1.html)。

その他にも、新たに雇用を行う場合の助成金には多くの選択肢が用意されています。また、労働者に能力開発等を行う場合の支援としてキャリア形成促進助成金などもあります。

詳細については今後もご紹介していきたいと思いますが、もしこのような助成金のご利用を検討される場合にはいつでもご相談下さい。

top