トップページ  >  連載  >  税制知っ得63

税制知っ得

令和4年2月8日

63.グループ通算制度のメリット②(欠損金の通算)(1)

はじめに

各論の第2回目は、グループ通算制度の「通算」のメリットの一つである欠損金の通算の計算方法について、具体例を用いて示します。

設例

通算法人に、過年度の繰越欠損金のないもっともシンプルな場合を例にします。

ケース(1)通算前欠損金額の合計額(▲50+▲250) ≦ 通算前所得金額の合計額(500+100)

  P社 S1社 S2社 S3社
通算前所得(欠損) 500 100 ▲50 ▲250

ケース(2) 通算前所得金額の合計額(250+50) ≦ 通算前欠損金額の合計額(▲500+▲100)

  P社 S1社 S2社 S3社
通算前所得(欠損) 250 50 ▲500 ▲100

但し、上記の欠損金額は、欠損金額を控除する前の所得の金額(法人税法57条1項。以下「所得金額」といいます。)。各社は、控除額が優遇される中小法人等に当たらない。(「グループ通算制度に関するQ&A第49問より」)

各社単体申告の場合

ケース(1)

  P社 S1社 S2社 S3社 合計
通算前所得(欠損) 500 100 ▲50 ▲250  
法人税 500×23.2%
=116
100×23.2%
=23.2
0 0 139.2

ケース(2)

  P社 S1社 S2社 S3社 合計
通算前所得(欠損) 250 50 ▲500 ▲100  
法人税 250×23.2%
=58
50×23.2%
=11.6
0 0 69.6

なお、資本金1億円超の法人を前提とする。

グループ通算制度の場合

(1)操作段階

(2)基本計算式

ア 通算対象欠損金額の損金算入

欠損法人の欠損金額の合計額が、所得金額の合計額を限度として、各所得法人に配分され、損金算入

 

通算前欠損金額の合計額(①) ≦ 通算前所得金額の合計額(③)

 

通算前欠損金額の合計額(①) > 通算前所得金額の合計額(③)

イ 通算対象所得金額の益金算入

所得法人の所得金額の合計額が、欠損金額の合計額を限度として、各欠損法人に配分され、益金算入

 

通算前所得金額の合計額(①) ≦ 通算前欠損金額の合計額(③)

 

通算前所得金額の合計額(①) > 通算前欠損金額の合計額(③)

 

アテハメ

ケース(1)

  P社 S1社 S2社 S3社 合計
通算前所得(欠損) 500 100 ▲50 ▲250  
損益通算 ▲300×500/600
=▲250 
▲300×100/600
=▲50
300×50/300
=50
300×250/300
=250
 
損益通算後 500-250
=250
100-50
=50
▲50+50
=0
▲250+250
=0
 
法人税 250×23%
=58
50×23%
=11.6
0 0 69.6

ケース(2)

  P社 S1社 S2社 S3社 合計
通算前所得(欠損) 250 50 ▲500 ▲100  
損益通算 ▲300×250/300
=▲250
▲300×50/300
=▲50
300×500/600
=250
300×100/600
=50
 
損益通算後 250-250
=0
50-50
=0
▲500+250
=▲250
▲100+50
=▲50
 
法人税 0 0 0 0 0

なお、地方税については、グループ通算の影響が及ばないように建て付けてある。もっとも、地方税のうち、法人住民税の課税標準は法人税額、法人事業税の課税標準は法人所得金額とされているところ、グループ通算制度適用法人については、修正しなければ、その計算結果が課税標準とされてしまうので、これを巻き戻すように住民税及び事業税の計算がなされるので、ややこしい。

 

まとめ

グループ内の各法人が単体で申告した場合のグループ全体の法人税額 = ケース(1)139.2

                                  ケース(2) 69.6

グループ通算制度により申告した場合のグループ全体の法人税額   = ケース(1) 69.6

                                  ケース(2)   0

この違いは、グループ全体として、所得を計算したことで、欠損法人の欠損金額が、所得法人の所得に分配されたことによります。

  top