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企業支援エトセトラ

令和4年8月10日

43.令和4年度のお勧め助成金

雇用関係の助成金と言えば、新型コロナウイルスの影響で雇用調整助成金が多く利用されていましたが、それ以外にも雇用・労働分野においては様々な助成金が用意されています。令和4年度から新設された助成金は少ないですが、従前の助成金についても変更点が多くみられます。今回は、令和4年度の助成金の中からお勧めの助成金をご紹介いたします。

 

人材開発支援助成金

人材開発支援助成金は、事業主が労働者に対して訓練を実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等を助成するものです。その中でも「人への投資促進コース」は、今年度新たに創設されたもので、今後期待される助成金として注目すべきものです。

人への投資促進コース

「人への投資」を加速化するために、国民から募集された提案・アイデアをもとに、令和4年度から令和6年度までの間、新たに設けられたコースです。

対象となる訓練は、①デジタル人材・高度人材の育成として、高度デジタル人材訓練/成長分野等人材訓練、情報技術分野認定実習併用職業訓練、②労働者の自発的な能力開発の促進として、長期教育訓練休暇等制度、自発的職業能力開発訓練、③柔軟な訓練形態の助成対象化として、定額制訓練です。経費や賃金の一部が助成されます。

このうち、定額制訓練についてご紹介します。定額制訓練とは、正社員または非正規社員の社員教育を、外部の研修会社が用意したeラーニングで実施する訓練で、1訓練あたりの対象経費が明確でなく、同額で複数の訓練を受けられるというサブスクリプション型で行われる訓練をいいます。

 

[経費助成率] 中小企業の場合45%(生産性要件を満たした場合+15%

大企業の場合30%(生産性要件を満たした場合+15%

※生産性要件とは、付加価値を雇用保険被保険者数で除した数字が3年度前に比べて6%以上伸びているか等によって判断する要件です。

 

本助成金は、受講者1人あたりの経費助成の限度額や支給回数の制限は設定されておらず(1事業所あたりは年間1500万円が限度額)、サービスの基本料金のほか、初期設定費用、アカウント料、修了証発行費用等のオプション経費も支給対象経費となっています。また、厚生労働省は今年度も非正規社員の教育とそれに伴う待遇改善に力を入れているところ、本コースの対象となった非正規社員がその後正社員化した場合は、キャリアアップ助成金の支給額が加算されるというメリットもありますのでお勧めです。

なお、今年度から、特定訓練コース等の他のコースについても要件や助成額等の見直しが行われており、例えば、特別育成訓練コースの中の一般職業訓練について、今まで対象外であったeラーニング訓練や通信制によるOff-JT訓練も対象になっています。詳細はこちらをご覧ください。

キャリアアップ助成金

非正規雇用労働者の企業内のキャリアアップを促進するため、正社員化、処遇改善などの取り組みを実施した事業主に対して支給される助成金です。

正社員化コース

今年度からの大きな変更点は、令和4年4月1日以降、有期雇用労働者から無期雇用労働者への転換の助成が廃止されたことです。これにより転換の態様は、有期雇用労働者を正社員にする場合と、無期雇用労働者を正社員にする場合の2種類になりました。

また、令和4年10月1日以降は、正社員の定義が変更され、「賞与または退職期の制度」または「昇給」が適用されている者に限られます。また、転換の対象となる非正規雇用労働者は、賃金の額または計算方法が「正社員と異なる雇用区分の就業規則等」の適用を6か月以上受けて雇用している有期または無期雇用労働者となります。

[助成額]

(中小企業の場合)

有期 → 正社員 1人当たり57万円(生産性要件を満たした場合72万円

無期 → 正社員 1人当たり28万5000円(生産性要件を満たした場合36万円

(大企業の場合)

有期 → 正社員 1人当たり42万7500円(生産性要件を満たした場合54万円

無期 → 正社員 1人当たり21万3750円(生産性要件を満たした場合27万円

また、人材開発支援助成金の特別育成訓練コースや、前記の人への投資促進コースでの特定の訓練修了後に正社員化した場合、以下の加算助成金が支給されます。

(中小企業・大企業ともに)

有期 → 正社員 9万5000円(生産性要件を満たした場合12万円

無期 → 正社員 4万7500円(生産性要件を満たした場合6万円

本助成金は、9年前から創設されており人気の助成金ですが、上記の通り、今年度から大きく申請条件が変更されましたので、就業規則等の見直しが必要となりますので注意が必要です。

なお、他のコースにおいても、2人目以降の対象労働者に係る加算が廃止されるなど今年度から様々な変更が行われています。詳細はこちらをご覧ください。

両立支援等助成金

本助成金は、職業生活と家庭生活が両立できる職場環境づくりを行う事業主を支援する助成金です。改正育児・介護休業法の施行(詳細はこちら)に伴い、出生時両立支援コース及び育児休業等支援コースにおいて制度内容の変更が行われています。また、代替要員加算が新設されました。

出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)

令和4年度から第1種と第2種の2種類の支援金になりました。対象は中小企業のみです。なお、男性社員が育児目的休暇を取得した場合の助成金は、今年度から廃止されています。

 

第1種:男性労働者が、この出生後8週間以内に開始する連続5日以上の育児休業を取得した場合

 

[助成額] 20万円(1事業主1回限り)

育児休業を取得した男性労働者の業務を代替する従業員を新規雇用(派遣社員を含む)した場合、20万円が加算(代替要員が3人以上の場合45万円)

 

第2種:第1種の助成金の支給を受けた事業主において、男性労働者の育児休業取得率が3事業年度以内に30%以上上昇した場合で、第1種申請に係る者以外に育児休業を取得した男性労働者が2名以上いる場合

[助成額] 20万円(1事業主1回限り)

育児休業取得率30%以上の上昇を達成した時期が

1年以内 60万円(生産性要件を満たした場合75万円

2年以内 40万円(生産性要件を満たした場合65万円

3年以内 20万円(生産性要件を満たした場合35万円

 

法改正にともない、男性労働者に育児休業の取得について個別に通知および意向確認が義務付けられており、今後育児休業を取得する男性労働者が増えることが予想されますので、男性労働者を多く雇用されている中小企業にはおすすめの助成金です。詳細はこちらをご覧ください。

65歳超雇用推進助成金(65歳超継続雇用促進コース)

65歳以上への定年引上げ等や高年齢者の雇用管理制度の整備等、高年齢の有期契約労働者を無期雇用労働者に転換した事業主に対して助成するものです。

65歳超継続雇用促進コース

令和4年4月1日以降に、①65歳以上への定年引上げ、②定年の定めの廃止、③希望者全員を対象とする66歳以上の継続雇用制度の導入、④他社による継続雇用制度の導入のいずれかを実施した事業主に対して助成を行うコース

 

[助成額]

定年引上げ等の措置の内容や年齢の引き上げ幅等に応じて金額が異なります。

①及び②の場合

引上げ年齢/対象社員数 65歳 66~69歳 70歳以上 定年制廃止
5歳未満 5歳以上
1~3人 15万円 20万円 30万円 30万円 40万円
4~6人 20万円 25万円 50万円 50万円 80万円
7~9人 25万円 30万円 85万円 85万円 120万円
10人以上 30万円 35万円 105万円 105万円 160万円

③の場合

引上げ年齢/対象社員数 66~69歳 70歳以上
1~3人 15万円 30万円
4~6人 25万円 50万円
7~9人 40万円 80万円
10人以上 60万円 100万円

④の場合

引上げ年齢 66~69歳 70歳以上
支給限度額 10万円 15万円

60歳以上の社員(雇用保険被保険者)が1名いれば申請できます。令和3年度は、同年4月1日に70歳までの雇用が努力義務になったことで(詳細はこちらをご参照ください)、定年引上げ等を行う会社が増加し、非常に人気があったため、令和3年度は9月に受付終了となりました。来年度以降は要件が厳格化する可能性もありますので、今年度も早めの申請を検討された方が良いと思います。

 

その他の有益な助成金情報についても、今後、適宜ご紹介していきたいと思います。

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