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開業時の届出に関する注意

個人事業であっても、会社であっても、開業時に提出しなければならない書類はたくさんあります。その一覧については、国税庁のホームページを見て頂ければと思いますが、書類の中には、事業を始めるにあたり是非とも提出して頂きたいものや、提出にあたって注意すべきものがあります。ここでは、それらについて、ご説明したいと思います。

所得税の青色申告承認申請書

青色申告承認申請書は必ずしも提出する必要はありませんが、提出することを強くお勧めします。青色申告をするには、日々の取引を記録し、申告時に損益計算書や貸借対照表を添付する必要がありますが(所得税法148条、149条)、これをしておけば様々な特典を受けることができます。

ⅰ)青色申告特別控除(租税特別措置法25条の2第3項)

所得から、65万円を控除することができます。

ⅱ)青色事業専従者給与(所得税法57条1項)

法人化のメリット・デメリット②でも記載しましたが、事業者と生計を一にする配偶者その他の親族への給与を経費とすることができます。

ⅲ)純損失の繰越控除(所得税法70条1項)

過去3年間で生じた損失を繰り越し、所得から控除することができます。

ⅳ)純損失の金額の繰戻しによる所得税還付請求(所得税法142条)

その年に生じた純損失の全額の全部又は一部を、前年分の所得に繰戻し て控除し、税額を算出し直した場合の差額の税額を還付請求することができます。

ⅴ)貸倒引当金の経費算入(所得税法52条2項)

「貸倒引当金」というのは、売掛金や受取手形の代金が、取引先の倒産等により回収不能となるのを見込んで資産をマイナスにするものです。貸倒引当金に、引当金に繰り入れる際に、債権を個別に評価するものと一括で評価するものがあります。そして、一括評価の債権の合計額の5.5%(金融業の場合は3.3%)に達するまでの金額を必要経費とすることができるのです。

消費税課税事業者選択届出書

これは、免税事業者が、課税事業者となることを選択する場合に提出するものです。こちらも、法人化のメリット・デメリット②で少し触れました。前々事業年度の課税売上が1000万円を超えている場合や前事業年度開始日以降6か月間の課税売上高が1000万円以上である場合は、消費税の納税義務があります。課税売上が1000万円を超えると、翌期に税務署から「消費税課税事業者選択届出書」が送られてきますので、記載して送るようにしましょう。

このように消費税の納税義務が生じる場合に、この届出書を提出するのは当然ですが、免税期間であっても届出書を提出した方が良い場合があります。それは、消費税の還付を受けられる場合です。

消費税の納税額の計算は、「預かった消費税-支払った消費税」によって算出します。つまり、その年の売上が2000万円で、課税仕入(消費税法2条12号)が1000万円だった場合、預かった消費税は100万円、支払った消費税は50万円で、差額の50万円を納税することになります。反対に、売上が1000万円で経費が2000万円だった場合、消費税を50万円多く支払っていることになりますよね。これを還付請求することができるわけです。ここで、「消費税課税事業者選択届出書」が必要になってくるのです。免税事業者の場合は、消費税を納税する必要がない反面、計算上還付金が発生する場合でも、還付請求もできません。事業開始年度は、備品や車両等の購入で経費が嵩みますよね。ですから、還付請求できるケースも十分予想されます。ちなみに、この届出書は、適用を受けようとする課税期間の初日の前日までに提出する必要がありますが、課税期間が事業開始日の属する期間であれば、その課税期間中に提出すれば足ります。ですから、帳簿をこまめにつけて、還付になるか納税になるか見極めた上で、届出書提出の判断をすると良いでしょう。

消費税簡易課税制度選択届出書

「簡易課税制度」というのは、前々事業年度の課税売上高が5000万円以下で、この届出書を提出している事業者が、実際の課税仕入れ等の税額を計算することなく、課税売上高から一定割合の仕入控除税額の計算を行うことができる制度です。「一定割合」については、事業を、卸売業、小売業、製造業、その他の事業、サービス業等の5つの区分に分け、それぞれに応じたみなし仕入率が定められています(消費税法37条、消費税法施行令57条)。

事業を行う中で生じる個々の取引について、一つ一つ、課税取引か、非課税取引(又は不課税取引)かというのを判断する必要がなく、手間がかなり省けます(とはいえ、最近は会計ソフトも発展しており、課税取引化どうかの判断をソフトがしてくれるものもたくさんあります)。手間という面以外の大きなメリットは、簡易課税によって、本来納めるべき消費税よりも実際の納税額が少なくなる場合がよくあるということです。つまり、卸売業はみなし仕入率が90%ですが、個々の取引について課税の有無の判断をしていった結果、課税仕入れの割合が80%でした、というような場合は、簡易課税にした方が得ですよね。性能の高いソフトを使わない場合でも、概ねの課税売上、課税仕入れを把握し、簡易課税制度を採用した方が得なのか検討する必要があります。

なお、この簡易課税制度は、適用を受けようとする課税期間の開始の日の前日までに提出する必要があります。また、この届出書を一度提出すると、2年間は、実額控除によって納税することはできません。その意味においても、将来を見据えて経営のなりゆきを予測することが重要です。

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