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会社形態の選択方法 -「合同会社」っていいの?-

さて、あなたは会社を設立しようと決めました。

会社には、「株式会社」、「合同会社」、「合名会社」、「合資会社」の4つの形態があることはご存知でしょうか。実際には、株式会社の形態がほとんどなのですが、現在、合同会社が増えてきています。なんとなく株式会社を選ぶのではなく、ここでもメリット・デメリットを考えて、会社形態を選びましょう。

 

「合同会社」「合名会社」「合資会社」は、まとめて「持分会社」と呼ばれています(会社法第3編)。

合名・合資会社における、株式会社と比較したメリットというのは、ほぼ、合同会社のメリットと同じです。一方、合名・合資会社は、社員が無限責任を負うという決定的なデメリットがあります。つまり、会社の財産をもって債権者に支払いができない場合は、社員個人の財産から弁済しなければならないのです。株式会社の場合でも、代表取締役個人が保証人となることはよくありますが、代表取締役ではない社員が無限責任を負うので、かなり大きなデメリットです(合名会社は無限責任社員のみで、合資会社は無限責任社員と有限責任社員で構成されています)。このデメリットのため、合名・合資会社というのはあまりありません。なお、株式会社と合同会社は、有限責任社員によって構成され、株主又は社員は、出資額の限度で責任を負えば足ります。

 

以下では、合同会社における、株式会社と比較したメリットについてお話していきましょう。

メリット①設立費用が安い

まず、設立段階の費用で、株式会社と比べてメリットがあります。

合同会社では、作成した定款について公証人に認証してもらう必要がありません。ですから、認証にかかる手数料5万円が不要です。また、設立登記も最低ラインが6万円です(登録免許税法9条別表1、24(一)ハ。株式会社は15万円)。印紙代の4万円が必要な点は株式会社と同じです。全体では、株式会社と比べて約14万円安くなります。

メリット②決算公告の義務がない

株式会社においては、貸借対照表(大会社の場合は、損益計算書も)を公告しなければなりませんが(会社法440条1項)、合同会社は社員以外の第三者に対して広く広告する必要はありません(会社法618条1項)。

確かに、公告のための作業が不要だという意味ではメリットではあるのですが、「合同会社であれば業績を見られないで済む」と考えているようでは、甘いでしょう。貸借対照表や損益計算書を作成する義務があるのですから(会社法617条1項2項)、経営努力で誰に見られても恥ずかしくない計算書類を作り、取引先や銀行からの信用を勝ち得るようにしましょう。

メリット③定款自治

合同会社の最も大きなメリットは、定款自治です。

合同会社というと、何となく、「株式会社よりは小規模な会社」というイメージを持たれがちですが、世の中には著名な企業が株式会社から合同会社に移行した例があります。例えばiphoneやipodで有名なappleの日本法人は、「Apple Japan合同会社」です。また、小売チェーンのSEIYUは、「合同会社西友」です。このような大企業がこのような形をとっているのは、合同会社は、組織の運営について定款で自由に決めることができるという柔軟性を持っているからです(「定款自治」と呼ばれます)。

例えば、株式会社は、「所有と経営の分離」により、会社の所有者である株主が取締役に経営を委託するのが原則です。日常の業務は取締役会が決めて取締役が執行し(会社法362条、348条)、重要事項については株主総会が決定します(同295条、309条)。そして、監査役は取締役の業務の執行を監督する(381条1項)という形態が基本です。しかし、合同会社では、このような機関を置く必要がありません。社員同士が話し合って経営方針を決め、実行することが可能で、これを監視する期間を置く必要はありません。業務の決定方法も、社員の全員一致か、過半数か等自由に決めることができます。これにより、迅速かつ機動的な経営を行うことが可能です。

また、株式会社では、出資額に応じて配当を受けとります(同454条3項)が、合同会社では、業績への貢献度で決めても利益の分配を決めても構いません。会社設立又は入社に際して、金銭面で貢献することはできないが、高度な技術や知識で業績アップに貢献できる場合は、貢献度による分配の方が社員のインセンティブにつながります。

会社法の持分会社の規定を見ると、「定款に別段の定めがある場合を除き、」「定款で別段の定めをすることを妨げない。」という文言が多数出てきます。社員だけで内部的に決定できるとすると利害関係人が損害を被る等の理由から、定款で自由に定めることができないものも勿論ありますが、株式会社と比べると自由度は格段に高いと言えるでしょう。

以上のとおり、合同会社の数は、株式会社に比べると今はまだ少ないですが、メリットは必ずしも軽視できないものがあります。法人化の際には、よくお考えになると良いでしょう。

 

なお、世の中には、これら以外にも「有限会社」という形態もあるのですが、会社法及び有限会社法の改正により今から新たにこの形態で会社を設立することはできません。

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