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決算書の読み方② -損益計算書-

前回の貸借対照表に続き、今回は損益計算書です。

損益計算書は「PL」、「P/L」等とも表記されます。‘Profit and Loss’の略です。損益計算書にも勘定式と報告式があります。損益計算書は、その事業年度における会社の営業成績を示すものです。ここからは、会社の「収益性」や「成長性」を読み取ることができます。

損益計算書では、常に「比較」の視点で見ていきます。前月との比較、前年同月との比較、同業他社との比較です。損益計算書上に書かれている項目ごとに、これらの比較を行い、増減の理由を分析しましょう。比較するにあたっては、以下の点を押さえるようにしましょう。

(1)5つの利益を押さえる

損益計算書には5つの利益が載っています。

①売上総利益

「売上総利益」は、「粗利」と呼ばれるものです。売上から売上原価を差し引きます。

売上総利益÷売上×100=売上総利益率

もちろん、売上総利益率は高ければ高いほど良いです。この率は業種や規模によって変わります。例えば、平成23年度の法人企業の売上総利益率をみると、建設業25%、製造業26%、情報通信業74%、卸売業19%、小売業39%等となっています(中小企業実態基本調査・平成23年度決算実績・「3売上高及び営業費用(1)」)。

売上総利益率を上げるには、以下の点に注意してください。

値下げ競争で不必要に商品の価格を下げていませんか。会社が力を入れている商品の販売個数が落ちていませんか。粗利率の高い商品の販売に力を入れましょう。商品の販売個数のうち得意先が購入してくれている割合はどれくらいでしょうか。大口の得意先にばかり頼っていると、その得意先に切られると直ちに赤字に転落してしまいます。また、仕入れ価格を下げられないかも見直しましょう。

②営業利益

「営業利益」は「売上総利益」から「販売費及び一般管理費」を差し引いたものです。「販管費」とも言われますが、給与・賞与、地代家賃、消耗品費等です。

営業利益÷売上×100=売上営業利益率

営業利益率を上げるには、とにかく経費を見直すことです。経費の項目を一つ一つ確認しながら、抑えられるものがないかを検討しましょう。ただし、人件費を不要に下げたり従業員の働く環境を悪化させることは生産性を下げることになり、会社にとってかえって不利益をなりますから、コストカットに際してはそれが及ぼす影響をよく考えましょう。平均は約2.0%です。(中小企業実態基本調査・平成24年度確報〔平成23年度決算実績〕。なおこの項目の以下の数値も全て同調査より算出しております)。

③経常利益

「経常利益」は、「営業利益」に「営業外収益」を加え、「営業外費用」を差し引いたものです。営業外利益とは、本業以外の活動によって得られる利益で、受取利息や配当金等です。営業外費用とは本業以外の活動によって発生する費用で、支払利息や社債利息等です。つまり、企業の本業以外の活動も考慮し、経常的にどの程度の利益を上げることができるかを示すものです。

同じように、

経常利益÷売上高×100=売上経常利益率

を出すことができます。平均は、約2.3%です。

④税引前当期純利益

「税引前当期純利益」は、「経常利益」に「特別利益」を加え「特別損失」を差し引いたものです。「特別利益」は毎年発生するものではない臨時的な収入です。固定資産を売却した場合の売却益や長期保有の株式の売却益等です。「特別損失」はその反対で、臨時的な損失であり、固定資産売却損や長期保有株式の売却損等です。

税引前当期純利益÷売上高×100=売上税引前当期純利益率

平均は、1.8%

⑤当期純利益

最後に、「税引前当期純利益」から法人税を引いたものが「(税引後)当期純利益」です。

当期純利益÷売上高×100=売上当期純利益率

平均は、0.8%です。

  

以上、平均の比率を挙げてきましたが、何度も言うように、これらの比率は全業種の平均です。比率は業種によって大きく変わりますから、自分の会社の業種の平均値を必ず押さえるようにしましょう。

(2)伸び率を出す

売上や利益は単に「増えた」「減った」ではなく、伸び率を計算しましょう。過去の年度に遡って計算し、伸び率を比較してみましょう。

①増収率

(当期売上高-前期売上高)÷前期売上高×100

②増益率

(当期経常利益-前期経常利益)÷前期経常利益×100

(3)「ROA」と「ROE」を押さえる

これらの言葉は日経新聞でもよく出てきます。

「ROA」:総資本経常利益率(Return on Assets)

「ROE」:株主資本当期利益率(Return on Equity)

少し難しい話になりますが、これが分かっていると日経新聞も読みやすいですし、是非読んでいただければと思います。

ROAは、会社の総資本でどれだけの経常利益を上げているかを示すものです。

ROA=経常利益/総資本 ×100

という計算式で算出されます。分子と分母のいずれにも「売上高」を掛けると・・

経常利益/売上高×売上高/総資本

となります。

それぞれの分数を分解すると、左側が「売上高営業利益率」、右側が「総資本回転率」です。つまり、このいずれかを上げればROAは上がります。

ここで「回転率」の話をしなければなりませんね。回転率とは、1年間に資本をどれだけ有効利用したか、在庫を何度回転させたか等をみるものです。分子に「売上高」を入れ、

資本回転率なら、売上高÷総資本

棚卸資産回転率なら、売上高÷棚卸資産

という具合に計算します。回転数が多いほど、効率が良いということです。棚卸資産であれば、商品を仕入れてきてから販売するまでのスパンが短いということです。

「利益率」と「回転率」を上げることで、まず「ROA」5%目指しましょう。

「ROE」は、株主が投資した資本でどれだけの利益をあげているかをみる指標です。

ROE=経常利益/株主資本

ROEをROAを使って分解してみると、

ROE=経常利益/売上高×売上高/総資本×総資産/株主資本

となります。

左の二つの分数の乗は、上を見てください、(分子・分母に「売上高」を掛けた後の)「ROA」です。「総資本」と「総資産」は同じですから、「ROE」は「ROA」に「財務レバレッジ」を掛けたものです。今度は「財務レバレッジ」というまた新たな指標が出てきました。どんどんややこしくなっていきますが、もう少しご辛抱を。

「財務レバレッジ」というのは、

「株主資本をどれだけ有効利用できているか」ということ、裏を返せば、「他から借りたお金をどれだけ有効利用できているか」ということです。この比率は高いほど、他人資本を有効利用しているということです。

例えば、

A)総資産10(内訳:株主資本2、他人資本8)

B)総資産10(内訳:株主資本5、他人資本5)

という場合、財務レバレッジは、A)が5、B)が2で、A)の方が高くなります。他人資本に頼ると、財務レバレッジは上がるのです。

「ROA」を上げること及び他人資本を有効利用することで「ROE」は上がります。このように見ていくと、「ROE」の基礎にもなっている「ROA」の比率を上げることが重要だといえるでしょう。

何やら複雑な分析になってきましたが、こういう分析の仕方があることを頭の片隅に入れておいてください。

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