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経営改善計画

平成25年10月1日

4.経営改善計画策定の策定とは?

何回かお打ち合わせを行い、銀行に提示する経営改善計画(第一次案)を策定します。経営改善計画を策定するために、当事務所では、下記の通り、(1)分析、(2)アクションプラン、(3)計数計画、(4)返済計画の順で経営改善計画を完成させます。完成までには、(1)から(4)までのサイクルの中でフィードバックが何度となく行われます。

なお、経営改善計画を検討する過程で、必要に応じ、販路開拓など他の認定機関の助力が必要と判断した場合には、近畿経済産業局の認定機関ネットワークなどを通じて、適切な人材を紹介いただき、チームとして支援させていただきます。

経営改善計画が策定でき次第、バンクミーティングの日程を決め、貴社の代表取締役に経営改善計画の内容をプレゼンテーションしていただきます。当事務所では、必要に応じ、貴社の代表取締役に代わり、説明を補充し、また、貴社の利益を代弁します(*)。質疑応答の後、残された課題(宿題)を持ち帰ります。

後日、第一次案策定前と同じように、お打ち合わせを行い、銀行に提示する経営改善計画(第二次案)を策定します。

以後は、第1回目のバンクミーティングと同様の手続を行います。

 

最終的に、各金融機関の同意を得ることができれば経営改善計画は成立したことになります。

 

* 貴社が銀行に対し、融資条件の変更を求めるに際し、弁護士以外の認定支援機関が貴社を代理して、交渉を行い、報酬を得ることは、非弁行為として禁止されています(二年以下の懲役または三百万円以下の罰金)(弁護士法72条、77条)

(1) 分析

① 事業に関する概況把握

外部環境(貴社を取り囲む所与の環境)分析

内部環境(貴社の組織、運営などの貴社の意思により変更可能な環境)分析

② 利益の源泉の見極め

債務者企業のどの製品・サービスでどの程度儲かっているのか、儲かっていないのか、なぜ儲かっているのか、儲かっていないのか(採算性分析)

③ SWOT分析

強み(Strength) 、弱み(Weakness) 、機会(Opportunity)、脅威(Threat)

④ 財務分析

i 実質純資産額

資産及び負債を原則として時価で評価した場合の資産と負債の差額です。

ii 正常収益力

債務者企業が持つ経営資源によって継続的に得られる事業損益または事業キャッシュフローです。

iii 金融債務に関する情報

取引金融機関別の債務残高や契約条件(金利、返済期間、返済条件、担保、保証等)および債権保全状況に関する情報です。

iv 設備投資の状況

過去と将来の設備投資に関する情報です。

v 過剰債務および債務償還年数

過剰債務とは、要償還債務が利払前キャッシュフローの10倍を超える場合のその超えた部分の金額をいいます。また、債務償還年数とは、利払後キャッシュフローで要償還債務を返済し終わるまでの年数をいいます。

vi 資金繰りの状況

月次あるいは日次の収入と支出に関する情報です。

vii 清算配当見込率の試算

仮に清算した場合の一般債権の配当見込率です。

viii 税務上の繰越欠損金

繰越欠損金の発生状況に関する情報です。

 

(2) アクションプラン

アクションプランとは、経営改善施策別に、いつ、どこで、誰が、何を、どのように実施するかの手順を示した行動計画をいいます。

その目的は、①従業員による計画の実行を確保し、②貴社及び利害関係者が進捗状況を管理することにあります。

ですから、アクションプランの内容は、「いつ」、「どこで」、「誰が」、「何を」を具体的に書くだけでなく、「どのように実施するか」についても、定量的(頑張るなどの掛け声ではなく、具体的数値を入れます。例えば、営業課長が、7月中に、大阪市内の新規卸先の候補となる洋品店100軒に対し、商品の売込のため訪問する。)に記載します。

   

(3) 計数計画

計数計画とは、経営改善施策による改善効果を数値化した計画のことです。経営改善施策実施後の借入金返済予定額を把握するために策定されます。

計数計画の基本要素は、損益計画、貸借対照表計画、キャッシュフロー計画の財務3表をからなります。

損益計画は、損益計算書の勘定科目を構成する売上高から法人税等までの各金額を算出し、各期の予定純利益を計算します。この根幹は、売上であり、下位の計画として売上計画を策定します。さらに、必要に応じ、売上原価・販管費計画、人員計画も策定します。

貸借対照表計画は、現金預金、運転資金、固定資産、借入金、その他資産・負債から構成されます。 下位の計画として運転資金計画、必要に応じ資産の取得・売却計画も策定します。

フリーキャッシュフローは、支払利息支払後の営業キャッシュフロー(本業で稼いだ資金)と投資キャッシュフロー(資産売却による収入等から事業活動のために必要な設備投資等による支出を除いたもの)の合計額です。借入金の返済原資の主要部分です。これは、損益計画及び貸借対照表計画をもとに作成されますが、単に両計画から導かれる変数というのではなく、いくら金融債務を返済するか決めることにより、両計画(支払利息、残債務等)にフィードバックされることになります。

   

(4) 借入金返済計画

借入金返済計画は、主にフリーキャッシュフローに基づき決定する返済総額を金融機関別に定めた計画です。

仮に、10年の計画を策定したとして、10年目の有利子負債残高の対キャッシュフロー比率が概ね10倍を超えてしまう場合には、単なるリスケジュールを超えて債権放棄などの金融支援を申し入れるなど別途対応が必要になります。

ここまでできて、ようやく経営改善計画は完成です。ここで留意していただきたいことは、初めから合実計画を作ることがゴールになっているということではありません。合実計画は目指すものであり、合実計画になるように数字を入れ込んでいく作業ではありません。無理な計数を入れ込むこと自体、計画の実現可能性が低くなり、合実計画の要件を満たさないことになります。また、経営改善計画のフォローアップで金融機関から信用を失い、却って信用を失うことになりかねません。大胆かつ慎重に計数を見積もることに留意してください。

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