トップページ > 法人化のメリット・デメリット①
「個人事業でするべきか、法人を設立するべきか」。事業を始めるときに必ず悩む問題だと思います。個人事業で始めたとしても、経営が軌道に乗ってくると、「いつ法人化すべきだろうか」とまた悩むでしょう。
会社の設立は、昔に比べて、かなり容易にできるようになりました。従来、株式会社は1000万円、有限会社は300万円の最低資本金が必要とされていましたが(旧商法168条の4、旧有限会社法9条)、会社法の改正により理論的には、資本金0円でも設立が可能となりました。また、取締役の人数も、かつては3人以上必要とされていましたが、今では1人でも構いません(会社法326条1項)。さらに、設立時の手続面でも簡素化が図られ、発起設立の場合には、「払込金保管証明書」を発行してもらう必要がなくなりました。このような規制の撤廃により、会社設立のハードルが低くなりました。
しかし、会社設立は、会社という一個の法人格を生み出すものである以上、簡単に後戻りはできないという覚悟が必要です。ですから、個人事業を続けるよりも会社を設立した方が得なのかという見極めに頭を悩ませることでしょう。
まず、どの程度の所得であれば、法人化した方が得なのか、それぞれの場合にかかる税率の違いからは、以下のように検討できます。
住民税には、「所得割」「均等割」があり、自治体によっては「超過課税」を徴収しているところが多くあります。「均等割」は都道府県民税1000円、市町村民税3000円の合計4000円です(平成26年度から増税予定)。これに超過税額(地方税法1条5号)が多くて1000円程度として、5000円で計算してみます。なお、調整控除については考慮していません。
*府民税が4%、市民税が6%の合計10%です。
(*現実には、配偶者控除や生命保険料控除等による控除額がもう少しあるので、税額はこれより下がる可能性が高いです。今回は、法人の場合との比較という視点から、事例を単純化しています。)
個人事業の場合の所得500万円と同じ生活をするには、役員報酬を500万円とする必要があります。経費を個人事業の場合と同じとすると、売上800万円、役員報酬500万円、報酬以外の経費300万円となり、法人の所得は0円となります。
法人の所得が0円の場合は、法人税はかかりません。
法人の所得が0円の場合でも、均等割の7万円は納める必要があります(都道府県税が2万円で、市町村税が5万円です)。
法人の所得が0円の場合は、法人税はかかりません。
(500万-154万円-38万円)×10%-9万7500円=21万500円
(給与所得控除) (税率)
(500万円-154万円-33万円)×10%+5,000円=31万8000円
売上が800万円、個人の手元に残るお金(法人の場合は給与がこれに該当します)が500万円というケースで比較してみました。法人と個人は別人格であるとはいえ、一人で経営の全てを行うような場合は、法人の利益は実質的に経営者個人の利益になりますから、法人と個人の税金を合算して考えるべきでしょう。そうすると、法人化した場合の方が納税額は約35万円安くなります。
今回は事案簡略化のためにその他の控除をしていませんし、他にも考慮すべき要素はたくさんあり、一概には言えないのですが、所得控除前の所得が400万円程度に達するようであれば、法人化を検討されるのが良いと思います。
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