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法人化のメリット・デメリット③ -法人化で負担増し?-

前回、前々回と法人化した場合のメリットをご紹介してきましたが、当然デメリットもあります。こちらもいくつか挙げて説明しましょう。

デメリット①7万円の法人住民税の支払い

法人が法人税、法人住民税及び法人事業税を納付する義務があることは既に述べました。これらの税額の算出方法は、法人の課税所得をもとに計算するので、課税所得が0の場合は、基本的に納税することはありません。しかし、法人住民税のうち、均等割は、所得に関係なく課税されるものなので、赤字であっても納税しなければならないのです

【資本金等の額が1000万円以下、従業員が50人以下】というケースが下限ですが、それでも都道府県税2万円、市町村税5万円の合計7万円が必要です(地方税法52条1項表1ホ、312条1項表1ホ)。

個人事業の場合も住民税の均等割はありますが、超過税額を含めたとしても5000円程度ですから、大きな違いです。

デメリット②交際費の損金算入

法人は個人と違って、損金算入できる金額に限度があります。資本金が1億円以下の法人については、800万円までは全額損金算入できますが、800万円を超えると、その超えた額については、損金算入ができません(租税特別措置法61条の4第1項)。平成25年度税制改正で損金算入の範囲が拡大され、こうなりました。交際費を年間800万円使うというのは、割と大きな規模の企業でしょう。法人化するにあたって、ここで悩むということは事実上ないのではないかと思います。

デメリット③保険料の負担大

健康保険についてみてみましょう。【個人の控除前所得が500万円、法人化した場合は給与が500万円、32歳、世帯人数は一人】というケースで計算してみます。

【個人事業の場合】
医療分保険料

3万3528円+1万9621円+(500万円-33万円)×7.9%

   (平均割)   (均等割)      (所得割)

=42万2079円

後期高齢者支援分

  1万1565円+6768円+(500万円-33万円)×2.88%

   (平均割)  (均等割)     (所得割)

=15万2829円 (但し、最高限度額の規定により、14万円)

合計 56万2079円
【法人の場合】

(給料が500万円で、報酬月額が41万円という前提で算出します。なお、事業主が負担する児童手当拠出金は拠出金率が0.15%ですので、今回は考慮しません。)

健康保険料

  41万円×10.06%×12ヶ月分=49万4952円

厚生年金保険料

  41万円×17.12%×12ヶ月分=84万2304円

合計 133万7256円(個人と会社の各負担額の合計)

上記のケースですと、法人の方が保険料が倍以上高くなってしまいます。

デメリット④会社設立にかかる費用

個人で事業を始める場合と違って、会社設立時には設立のための費用がかかります。

定款は公証人の認証が必要ですが、この手数料として5万円が必要です(公証人手数料令35条1項、会社法30条1項)。定款には4万円分の印紙を貼る必要がありますが(印紙税法別表第一6六)、電子定款の場合は印紙を貼る必要はありません。ただし、電子定款は単に保存すればいいというわけではありません。ICカードリーダー・ライターが必要ですし、面倒だからと専門家に依頼すると、手数料がかかります。

会社設立には登記手続きが必要ですが、この設立登記には最低15万円がかかります(株式会社の場合。登録免許税法9条別表1、24(一)イ)。

この他にも、定款謄本や印鑑証明書等、各種手続きに必要な書類を取得するための手数料が数千円程度かかってきます。

このように、法人化するとデメリットもありますが、いずれも金銭面での問題ですから、売り上げが伸び、所得も上がってくれば、迷わず法人化することをお勧めします。

 

3回にわたり、法人化のメリット・デメリットについてお話してきました。確かに、法人化すれば税制上のメリットは大きいですが、税金対策は法人化の決め手ではありません。

法人化しても、法人の所得が上がらなければ融資は簡単には受けられません。

また、一個の法人格を作る以上、事業をやめる場合には清算手続きを取る必要がありますので、始めるときも辞めるときもそれなりの覚悟が必要です。法人と個人の金銭を明確に切り分ける必要もあり、適正な会計が一層求められます。

しかし、法人は厳格な手続きにしたがって創設され、運営されるからこそ、対外的な信用力が高まり、融資や助成が受けやすくなるのです

生身の人間(自然人)とは異なり寿命というものがありません。創業者のあなたが引退した後も、あなたが埋め込んだDNAによって、後輩たちが会社というこの器を発展させていけるのです。

今をときめくどんなに大きな会社でももとは小さな会社でした。会社のDNAが社会に認知されてからが株式会社の醍醐味です。新株を発行することにより増資して、社会から多額の資本を集め、これをもとにさらに人材、技術を結集し、更なる飛躍ができるのです。

今法人化すれば得をするのかお悩みの方は、一度ご相談ください。

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