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法人化のメリット・デメリット② -法人化で経費をより多く計上する!―

「税率の差」以外にも、法人化すれば税制上お得なものはいくつかあります。法人化によって経費計上することができるものはたくさんあります。

メリット①家族への給与・賞与

「業務が慌ただしいので、誰か事務作業を手伝って欲しい。でも、人を雇うのはちょっと・・」という場合に、配偶者や両親に手伝ってもらうことがよくあると思います。

生計を一にする配偶者や両親への給与を経費として落とすためには、個人事業主の場合、「専従者」に該当する必要があります(所得税法56条、57条)。そのためには、

ⅰ)青色申告者と生計を一にする配偶者その他の親族であること

ⅱ)その年の12月31日時点で年齢が15歳以上であること

ⅲ)その年を通じて6月を超える期間、その青色申告者の営む事業に専ら従事していること

が必要です。また、事前に税務署に対し、「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出する必要があります。

一方、法人の場合は、このような要件はありません。社員にして給料を払えば、損金算入できます(但し、不相当に高額な場合、損金算入は認められません)。

個人事業の方が様々な要件が課され厳格なように見えますが、きちんと実態の伴った専従者の場合、上記の要件はさほど厳しいものではないでしょう。

法人化して給与を年間103万円以下にした場合、配偶者控除という形で、さらに本人の所得控除ができるので(所得税法83条)、その意味では法人化のメリットがあるといえるでしょう。

メリット②退職金

個人事業の場合、自身に対する退職金や青色事業専従者に対する退職金を経費とすることはできません。

会社の場合は、自分に対する退職金を経費とすることができます。しかも、退職金控除額はかなり大きな金額が認められ(所得税法30条)、分離課税となっているため、これにはさほど税金がかかりません

ですから、自身に対する退職金を考える場合、早めに法人化を検討した方が良いでしょう。

メリット③法人が契約者となる生命保険

法人が、経営者を被保険者、受取人を法人として、生命保険の保険契約を締結した場合、保険料全額又は2分の1を損金算入することができます。保険の種類によって変わってきますので、別の機会に説明したいと思います。

経営者の死亡により法人が受け取る保険金には法人税が課されますが、死亡退職金として経営者の遺族に支払うことで経費とできるため、結局所得は増えません。

個人の生命保険料控除額が最大で12万円までしか認められていないこと(所得税法76条4項)と比べれば、法人の生命保険契約は節税としては良い方法だと思います。

メリット④役員社宅

自宅でも事業をしている場合は、自宅兼事業所として、家賃の一部を経費計上したいと考えるでしょう。個人事業の場合は、面積で家賃や水道光熱費等を按分して経費計上します。

法人の場合は、法人として家主と賃貸借契約をし、法人が家賃を支払うという形にすれば法人の経費にすることができるのです。ただし、役員に対して社宅を賃貸(又は転貸)するため、役員からは相当額の賃料を受け取る必要があります(相当額の賃料を受け取っていなければ、役員に対する給与として課税されることになります)。賃料相当額については、社宅の面積や耐用年数等により仔細な計算式があるのですが、大雑把に言って、会社が家主に支払う賃料の50%を支払っていれば、問題ないでしょう。

法人化による節税は、「経費をより多く計上できる」ということだけではありません。他にも以下のような特典があります。

メリット⑤欠損控除

欠損金の繰越控除制度は、個人・法人いずれの場合にも認められていますが、繰越年数が大きく違います。個人の場合は、3年間しか繰り越せないのに対し、法人の場合は9年間も繰越ができるのです(所得税法70条1項、法人税法57条1項)。

メリット⑥消費税の節税

基準期間における課税売上高が1000万円以下である法人については、課税期間中に国内で行った課税資産の譲渡等につき、消費税の納付義務が免除されます。ただし、事業年度開始の日における資本金の額が1000万円未満であること、また、前事業年度開始日以降6か月間の課税売上高が1000万円以下であることが必要です(消費税法9条1項、9条の2第1項、12条の2第1項)。法人を設立した事業年度は、基準期間がありませんから、2期分は消費税が免税になります。法人設立の前に個人事業で1000万円以上の課税売上を上げていたとしても、これは考慮されません。ですから、個人事業で1000万円以上の課税売上が2期以上続くようになれば、3期目には法人化への移行するよう検討するのが良いと思います

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